第104章 護衛〜冨岡義勇【R強】
これ以上惑わせないでほしいのに、義勇さんは私を愛おしそうに大切に、強く強く抱きしめて離さない…。
腕の強さと切ないほどの体温に、ゆきの鼓動はさらに速くなっていった。
ゆきは、このまま義勇の温もりに溶けてしまいそうな感覚に陥っていた。
義勇がそっと腕の力を強め、ゆきの項に顔を埋めようとした…その時だった。
「ゆき様、大丈夫ですか!? お怪我はありませんか!」
静まり返った廊下に、先ほどの「隠」の慌てた声が響き渡る。
息を切らせて追いかけてきたのだ。
その声を聞き、義勇はすぐにゆきから体を離した。
「あっ! 水柱様! もしかして、ゆき様を助けてくださったのですか……! ありがとうございます、助かりました」
隠は階段を駆け下りてくると、心配そうにゆきの顔を覗き込んだ。
突然の出来事に心臓がバクバクと脈打つ中、義勇はいつも通りの凛とした表情に戻り、静かに口を開く。
「…もう時間も遅い。これ以上騒がしくすれば、皆を起こすことになる。ゆきは俺が部屋まで送り届ける。お前も戻って休め」
「しかし…」
「俺はゆきの護衛で来ているんだぞ?構わん」
「はっ!では、失礼いたします!」
威厳に満ちた水柱の言葉に、隠は深く頭を下げると、足早に去っていった。
再び訪れた静寂
暗い廊下には、二人きりの気まずい空気が重く漂う。
ゆきはただ自分の足元を見つめていた。
「少し散歩しないか?」
沈黙を破ったのは、低く穏やかな義勇の声だった。
「えっ?」
「喉も渇いたし庭の井戸まで汲みに行こう。…眠れなかったから、部屋を抜け出たんだろう?」
見透かしたような優しい声音に、ゆきは返す言葉を失って、さらに深くうつむいた。
眠れなくなった原因が、他ならぬ義勇さん、あなたの存在のせいだなんて。
すぐ近くにいる義勇さんの体温や、抱きしめられた腕の強さが頭から離れなくて、胸が苦しい。
そんな本当の理由など、口が裂けても言えるはずがなかった。