第104章 護衛〜冨岡義勇【R強】
鼓童は早まったままだが、一人きりになった部屋はひどく静かで、先ほどまで近くにあった義勇の体温ばかりが鮮明に思い出してしまう…。
会える距離に義勇がいると思うと、胸の鼓動は一向に静まらず、どうしても寝付けなかった。
駄目だ…落ち着かない…お水でも貰いに行こう。
居ても立ってもいられなくなったゆきは、こっそりと襖を開けて廊下に出た。ひんやりとした夜の空気が肌を撫でる。
ゆきは、寝静まった静かな屋敷の中を、ゆっくりと進んだ。
甘露寺の屋敷は和洋折衷のモダンな造りで、奥へと進むと少し珍しい木造の階段が佇んでいた。
何故か階段の上が気になりゆきは息を潜め、薄暗い階段を一段、また一段と静かに登っていく。
ギィ…と小さく床が鳴る音さえも、静寂に包まれた夜の屋敷にはひどく大きく響く気がして、心臓が跳ねる。
階段を登りきった先、微かに差し込む月明かりの部屋があった。恐る恐る中に入り窓辺へ足を進めた。
窓の外には、綺麗な満天の夜空が広がっていた…。
「綺麗…」
ゆきは、思わずそう口にしていた…。
確か…刀鍛冶の里で見た星空も綺麗だった。
ふと、無一郎の顔が頭によぎる…そして叩かれた頬にそっと触れた。
「…痛くは、ないけれど」
婚約者である無一郎の冷たい瞳を思い出し、胸が小さく疼いたその時。
「きゃっ!?」
背後からの物音に驚いて振り返ると、そこには見回りの「隠」が立っていた。
見つかった焦りから、水を貰いに来たと言えばいいものを何故か、ゆきは慌てて階段へと走り出した。
階段に差し掛かった時に、足元を滑らせてしまった。
浮遊感の後、落ちる//
そう覚悟して目を瞑った瞬間、強い力で引き戻され、温かい胸の中に抱きとめられた。
「…騒がしい。何をしている」
耳元に響いたのは、優しい義勇の声。
これ以上惑わせないでほしいのに、彼はゆきを愛おしそうに大切に、強く強く抱きしめて離さない…。
腕の強さと切ないほどの体温に、ゆきの鼓動はさらに速くなっていった。