第104章 護衛〜冨岡義勇【R強】
義勇はそっと頬から手を離すと、少しだけ距離を取った。
張り詰めていた空気がわずかに緩む。
「…少し、話さないか? 嫌なら、部屋を出るが」
ぶっきらぼうなようで、どこか気遣うような義勇の言葉に、ゆきは少しだけ迷った。
胸の鼓動はまだ速いままだが、甘露寺の言葉が頭を過る…。
「いえ、大丈夫です。お話ししましょう」
ゆきが小さく頷くと、義勇は静かに腰を落ち着けた。
そして、少しの間を置いてから、ぽつりと不器用な声を零した。
「この前…川辺で会った時、お前に色々と強引なことをして、すまなかった」
その言葉に、ゆきの顔が一気にカッと熱くなる。
甘露寺の隠と買い物に出たあの日、川辺で義勇と偶然再会し…口づけを交わした
あの瞬間の、彼の唇の温度や切ない眼差しが鮮明に脳裏に蘇る。
「あ、あれは…その、私は…」
動揺のあまり言葉を詰まらせるゆきを見て、義勇は寂しげに目を伏せた。
「わかっている。俺が強引にしてしまった。お前の意思ではない、申し訳なかった。…ただ、久し振りにお前に会えて、感情が抑えられなかったんだ」
素直な義勇の告白に、ゆきはさらに胸が苦しくなる。
どう応えていいか分からず、手持ち無沙汰に視線を落とした瞬間、自分の寝間着の胸元が少しだけはだけていることに気がついた。
お風呂上がりで軽く帯を結んだだけだった事を忘れていた。
ゆきは慌てて、胸元の合わせをきゅっと手繰り寄せて正した。
「……」
その様子をじっと見つめていた義勇の口元から、切ない笑みが漏れた。
「はは…警戒されているんだな、俺は」
いつもは無表情な彼の、寂しそうなその笑み。
「別に警戒なんてしてません…」
ゆきは、俯いてしまった。
「屋敷の周りを見回ってくる。今夜はもう部屋を尋ねないから安心して休め」
義勇が、部屋から去った瞬間ゆきは、張り詰めていた糸が切れたように大きなため息をついてその場に寝転んだ。
何故か胸の鼓動が鳴り響いて、ドキドキが止まらなかった。