第1章 群青色の恋(冨岡義勇)
俺は藤の花の家まで雫を連れていき、女将と一緒に雫の看病をした。
「冨岡様、あの娘ですが…
脱水症状、睡眠不足、それに加え日常的に性的暴行を受けていた形跡があります…」
医者の診察が終わり、別室で話を聞くと、俺は握り拳に力を込めた。
いつからこんな事に…
俺のくだらないプライドで雫の前から姿を消した2ヶ月間、いや…もしかしたら俺が見た赤い華も、あの男が関係していたのかもしれない。
だとしたら…
後悔の念が湧き上がる。
鬼を斬り、呑気に食事をして風呂に入り、稽古をし、変わらぬ日々を過ごしていた自分を心底軽蔑した。
「…なぜ気づけなかった…」
雫の眠る部屋の襖をゆっくりと開け、布団の方に目をやった。
静かな寝息が聞こえ、安堵した。
「…冨岡様…今夜はお泊りになりますか?」
後ろから、手拭いと桶を持って立っていた女将に話しかけられる。
「いや…このまま帰る。先程の男も心配だしな。
本来ならば鬼殺隊のためにある屋敷に一般人を運んでしまい申し訳ない…
…女将、無理を承知で頼みたいのだが、しばらく雫を預かってはくれないだろうか?雫にかかる金は全て俺が負担する。アイツには…帰る家がないんだ。」
頼む、と頭を下げる俺に、女将が焦って答えた。
「顔をお上げくださりませ、冨岡様っ…
あのお嬢さんの事は…私が責任を持ってお世話させていただきます。幸い今は隊士の方は誰もおりません。」
すまない、と女将に礼を言うと、雫の家まで向かったが、先程の男は既にいなくなっていた。
ーーーーーーーーーーーー
「珍しいね…義勇が一般人に手を挙げるなんて。」
「申し訳ありません…」
「あの男は警察に連れて行かれたよ。相当まずいことをしていたみたいでね…今回の事で明るみになったみたいだ。窃盗、脅し、強姦…町の皆も、彼がいなくなって安心しただろうね…」
「………」
「義勇…自分を責めているのかい?」
拳に力がこもる。
「……俺がいつも通りあの町に行っていたら…
こんな事にはならなかったのではないかと…思っています。」
「大切な子なんだね…」
「………」
ニコりとするお館様。