第3章 空色の恋(時透無一郎)
『ぇっ…水柱様っ…お話聞いていただけましたか…?
私にはそんな資格…』
「俺は十分あると判断した。
それともお前は…柱である俺の判断が間違いだと言いたいのか?」
『っ…そうでは……でも…』
胸の前で、ギュッと拳をつくる雫に
自分の姿が重なった。
選別での事が頭をよぎる。
「決まりだ。お館様にお話する。」
その数日後…
雫は正式に俺の継ぐ子となり、同じ屋敷で暮らすことになった。
side 無一郎
今日は半年に一度の柱合会議だった。
何故かわからないけれど、帰路につく今でも体の震えが止まらない。さっきから手が震えて仕方ない。
多分…
会議の中で、耳を疑うような事があったから。
「皆に一つ、報告があるんだ。」
ニコニコとするお館様がそう仰った。
「水柱である義勇に継ぐ子ができた。義勇、説明を…」
「…はい。数週間前に継ぐ子となったのは水の呼吸の使い手、雫という少女です。かなり力量があり、任務の後声をかけました。現在俺の屋敷で稽古をし……」
何でも忘れてしまう自分が唯一忘れなかったのが雫だった。
冨岡さんの継ぐ子?初耳だった。
柱たちが次々に冨岡さんに質問している。
あぁ、アイツか。以前任務で重なったが確かにセンスがあった、と宇髄さん。
私も見たことあるけど凄く可愛らしい子よね、とはしゃぐ甘露寺さん。
僕が固まっているのを、胡蝶さんが心配そうに見つめていたのがわかった。
帰り道の夕刻、震える体で歩いていると、後ろから声をかけられた。
「時透…」
冨岡さんだった。
「…何ですか?」
「雫と同期だと聞いた。柱合会議だと伝えたら時透によろしく伝えてくれと頼まれた。」
「………」
何それ?夫婦か何かなわけ?
「まぁ…死なない程度に頑張って…と、伝えてください。」
「あぁ…わかった。」
「…っ……」
この人なら本当に言いそうだと心配になり、言い直した。
「またっ…」
「……?」
「屋敷に遊びに来てほしいと…伝えてください。」
「わかった。2人で邪魔しよう。」
「冨岡さんは…忙しいでしょうから大丈夫です。同期として、雫と話がしたいだけなので…」