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【鬼滅の刃】彩りの恋(R18)短編集

第2章 若草色の恋(不死川実弥)



俺は


無意識のうちに


涙を流していた。


「……お館様…御創建で何よりでございます…あまね様も…」

「実弥…」

一瞬目を見開いた産屋敷校長ことお館様はすぐに微笑み、優しい声で囁かれた。

「思い出したんだね。」

「…はい。全て。」


お館様は頷かれると、椅子に座ってあまね様に席を外すよう伝えられた。

「3日間眠っていたんだよ。生徒達が口々に言っていてね…
不死川先生が飛んだとか、瞬間移動したとか…
まさかとは思ったけど、緊急全校集会を開いて、念の為生徒達の記憶を消しておいたよ。」

「ありがとうございます…
申し訳ありません…お手を煩わせてしまい…」

首を振るお館様。


「実弥、雫が気になっているだろう?
雫は…」



ガチャン…



『不死川先生っ…』

花瓶を落とす、涙でグチャグチャの雫。

花を生けてくれてたのか…


『申し訳…ありません…
私の不注意で…先生がもう起きなかったら…
どうしようって…』

ヒック、としゃくり上げる雫の姿を見て、お館様は立ち上がった。


「2人で話をするといいよ。私は行くね。
実弥…またゆっくり話そう。」


「ありがとうございます…」

体を起こすと、涙でグシャグシャになりながら、ベッドの前にいつまでも立ち尽くす雫の手を引っ張り、抱き寄せた。


『…っ……』

「ったく…いつまでメソメソしてやがんだ。
変わってねぇなぁ…テメェは昔も今も…」

『…………』


「何とか言いやがれ…
世話のかかる継ぐ子だな、テメェは…」

 

雫はゆっくりと顔を向け、俺の顔をマジマジと見ると

『……師…範……ですか?』

絞り出すようにそう言った。


抱き締める腕に力を込める。

「…馬鹿が。何でずっと言わねぇ…
お前入学式の時、既に気づいてたんだろうが…
3年間も無駄に…しやがって…」

『だって…迷惑…かけたくなくて…』


「俺がどんだけ…お前を待ってたと思ってんだ…
待ちすぎて…忘れたんだよ…昔の事…」



そう…



初めは俺も前世の記憶持ちだった。

勿論一番よく覚えていたのは雫の事だったが、待てど暮らせどお前は現れない。


俺なりに諦めたんだ、多分…

そして徐々に記憶は薄れていき、完全に忘れていた。
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