第2章 若草色の恋(不死川実弥)
アイツは何て言ってたんだっけ?
なぜ思い出せない…?
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職員室に戻ると、剣道部の生徒が煉󠄁獄に話しかけていた。
「煉󠄁獄先生、本日師範はいらっしゃらないのですか?」
「あぁ、すまない。本日父は休みだ。
人間ドックでひっかかったらしい。よく酒を飲むからな…心配だが大丈夫だろう。」
「…………」
"師範…"
「師範…そうだっ…師範だ。
アイツは俺に、師範て言ってたんだ…」
「不死川先生?」
「あぁ、いや…何でもねぇ…」
師範とわかった所で何だ。
俺を誰か、習い事の師範と間違えたのかもしれねぇ…
なのに何だ…?
師範という響きが俺の中で広がって、アイツへの感情がさっきとは別物になった。
「一体何がどうなってやがる…」
ズキン…
「…っ……」
急に頭痛がし、頭を押さえて蹲る。
"…生まれ変わって…あなたを…待っています…"
"テメェ…何言ってやがる…死ぬみてぇな言い方しやがって…
寝言は寝て言いやがれ、馬鹿が…
俺がぜってぇ…死なせねぇよ…"
何だ…?
俺の声…泣いてる…?
相手は誰だ。
ズキン…
「…っ…てぇ……」
「実弥?どうしたのかな?」
「…校長先生。」
産屋敷校長が目の前に現れ、蹲る俺の背中を擦って下さった。
「大丈夫です、ちょっと頭痛がして…」
「…それはいけないね。校長室で休むといい。」
校長はそう言うと、俺を校長室の隣室のベッドへと誘導して下さった。
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「起きたかい?気分はどう?」
「大分よくなりました…ありがとうございます。」
頭を下げ、部屋を出て行こうとすると…
「実弥…」
校長に呼び止められた。
いつもニコニコと優しく、全幅の信頼を寄せている校長。
「実弥…何か…あったのかな?」
「え…いや……あの…」
こんなありえねぇ話をしても、校長を困らせるだけ。
「……何でもありません。」
「…そう。もしまた体調が悪くなったらすぐにおいで。その時はどんな事でも…話してくれると嬉しいな。」
校長はニコリと笑い、俺を送り出してくれた。
こうなったら…直接本人に聞くしかねぇな…