第5章 呼吸
ーーー…
『はぁ……、はぁ…はぁ…』
…稽古を始めてから、どれくらい時間が経ったかな。
思っていた通り、冨岡さんはすごく強くて
私がどれだけ木刀を振るっても、掠りすらしない。
でも、こんなにも強い人と手合わせるのは初めてで…
…楽しくてずっとドキドキしてる。
私が攻撃を仕掛けて、冨岡さんがそれを交わして
隙をついてくるけど、私も交わして、また新たな攻撃を仕掛ける…
ひたすらその繰り返しだった。
冨岡さんの動きには全く無駄がなくて
一瞬でも気を抜くと、怪我に繋がりそうで怖いけど…
このギリギリの極限状態での戦いに高揚感が込み上げてきて、冨岡さんに一撃だけでもいいから決めてやりたい…
どうやって技を繰り出そうか考える為
お互いに打ち合い続ける状態だったけど、
私は一度後ろに飛んで、冨岡さんと間合いを取った。
『はぁっ…はぁ…ふぅー…』
「…まさかお前がこれほどまで
剣の腕を磨いていたとは思わなかった。」
『あ…ありがとう…ございます…。』
…冨岡さんは私の事を褒めてくれたけど
私と違って、あまり息が乱れてない。
やっぱり、男と女じゃ体格の差があるし
その分、体力の持ちも違うんだよね…。
それは努力したところで、どうにも出来ないし
気にしたってしょうがないこと。
令和時代にいた時だって
剣道の練習試合で、男性選手に何度か試合を申し込んだけど、負けることの方が多くて…
竹刀で強く打ち込まれるから、竹刀を握る手に来る振動も強くて、力の差を何度も何度も思い知らされて、悔しい思いをした。
でも、例え女でも
男の人にはない強みだってある…
そう思った時、私はしのぶちゃんとカナヲと3人で
稽古した時のことを思い出したーー…。