第5章 呼吸
『ちょっ…、だ、だめですよ!!
冨岡さん柱なんですから!!
私なんかに頭を下げたら格が下がります!!』
「今は1人の人間として、謝罪をしている。」
『いや、固い固い!考え方が固いですって!!』
…柱であるこの人に
ただの一般人の私が頭を下げさせた、なんて
鬼殺隊の誰かに知られたら……
私、殺されるんじゃないの!?
「俺は…お前の剣の腕を見込んで
鬼殺隊に向いていると思った。だから入隊を勧めた…
己の事…、そして、鬼を斬滅することだけしか考えていなかった。お前の気持ちを考えてやれなかった…。
不甲斐ない俺を、どうか許して欲しい。」
『え…』
冨岡さん…そんな風に思っててくれたんだ…。
私の気持ちを考えなかったからって
謝る必要なんかないのに…。
冨岡さんが私の事を考えてくれたのが嬉しくて
じんわりと胸が暖かくなるのを感じていたけど
未だに頭を下げている冨岡さんに
ハッとした私は慌てて声をかけた。
『あのっ、本当にもう謝らなくていいですから…
頭を上げて下さい…、お願いです…』
…これ以上冨岡さんに頭を下げ続けられると
罪悪感でどうしようもなくなる。
そんな私の空気を悟ってくれたのか、
冨岡さんは頭を上げてくれた。
『確かに…、鬼殺隊へ誘われた時から
もっと頑張ろうって思って…
体を酷使してた事は否定できないです…』
「…すまない。」
『冨岡さんは何も悪くないです!!
だって私……、鬼殺隊に誘ってもらえて
本当に嬉しかったんです…。
別の時代から来た私でも、この時代の人達の為に
役立つことが出来るんだって分かって…
冨岡さんには、感謝の気持ちでいっぱいなんですから。』
「っ…」
冨岡さんの青い瞳が少し揺らいでいて
すごく驚いているようだったけど、自分の本音が伝わるように、私は目を逸らさず、真っ直ぐに彼の目を見つめた。