第5章 呼吸
『見送りなんていいのに…
でも、ありがと。遅くならないうちに帰ってくるから。』
キ・ス・ナ
「「「気をつけて行ってきて下さいね!」」」
ア「あと、これは水柱様への手土産です。
隠の後藤さんが買ってきてくれたカステラが余っていたので、良かったら持って行って下さい。」
『え!?用意してくれたの!?
ありがとーーー!!!』
…アオイちゃんはなんて気が利く子なの〜!!
手ぶらで行っていいのかちょっと気にしてたから
手土産を用意してくれて本当に助かった…。
後藤さんが買ってくるカステラは高級品のようで
味は保証できるから、今度会えた時にお礼を言わないと。
「さん、お待たせしました。」
玄関でみんなと話していると
しのぶちゃんがやって来て私の前に立つと、スッと手を差し出し、その手には刀が握られていた。
『ん…?なんで、刀…?』
「猛獣の住処に
兎を放り込むようなものですから。」
『…?ごめん、
ちょっと言ってる意味が分かんない。』
「分からなくていいですから、持って行って下さい?
刀を持って歩くのも、筋力の増加に繋がりますので。」
『まぁ…確かにそうだね…』
真剣の刀を持つ事に、私は慣れていないし
しのぶちゃんもきっとそう考えているんだろう。
外はまだ明るい時間帯で
鬼が出ることもないから、使い道はないと思うけど
大人しく従った私は、着ている服のベルトに刀を通した。
『じゃあ、行って来ます。』
「今日は外の気温が低いので
あまり遅くならないうちに帰って来て下さい。」
『うん!分かってる。』
しのぶちゃんに返事をしてから
屋敷を出た私は、門を出る前にみんなに手を振って
書いてもらった地図を頼りに、冨岡さんの屋敷に向かって歩き出した。
ア「しのぶ様、なぜ刀を渡したんですか?」
し「…護身用、というところでしょうか。」
ア「…はい?」