第3章 積極
「…漸く理解した。鬼の胴を切ったと言うのは
剣道を習っていたから出来たことだったんだな。」
『はい。怪我が治ってから
しのぶちゃんとカナヲちゃんに稽古をつけてもらって…
何だか、元の時代にいた時より
筋力もついたみたいで、体も凄く動かしやすいんですよ。』
「きっと、お前に剣を教えた師は
才があったのだろうな…。先程の稽古で
お前の動きを見ていたら、それがよく分かった。」
『んー…。でも私は
しのぶちゃんやカナヲちゃんみたいに
呼吸?ってやつは使えてないし…』
「呼吸が使えなくとも、
戦える隊士は鬼殺隊内にもいる。
お前の場合、剣の技は熟練されているから
鬼の首を斬ることも容易いだろう。」
『そうなんですね…。でも…私は…』
…鬼殺隊の隊士じゃない。
屋敷で隊士の治療や看病、
しのぶちゃんやカナヲちゃんとの稽古、
アオイちゃんの炊事等のお手伝い…
これまでは、この時代に慣れることを優先してたから
自分が鬼を倒せるなんて、考えたことは一度もなかった。
「…、俺はお前の剣の腕を認めている。
先程の稽古、非の打ち所がない程素晴らしかった。」
『えっ…、あ、ありがとうございます…』
…いきなり照れること言ってくるな、この人。
照れ臭さを感じながらお礼を伝えると
冨岡さんは真剣な表情で私をジッと見つめてきた。
その綺麗な青い瞳で見つめられた私は
心臓の音が、一瞬ドキッと大きな音を奏でた。
「…、鬼殺隊に入らないか?」
『…!?わ、わたしが…?鬼殺隊に…?』
「鬼殺隊は鬼を狩る為に作られた、
政府非公認の組織…。
お前がこの時代の人間であろうとなかろうと
そんな事は関係ない。
ただ、鬼を滅殺しようという強い意志のある者なら
鬼殺隊はどのような生い立ちの人間でも受け入れる。」
『…。』
「…俺の話は以上だ、あとはお前自身が決めろ。」
…冨岡さんは、私を鬼殺隊に勧誘し
言いたい事だけ言うと、すぐに立ち上がって
部屋の外へ出て行ってしまった。