第3章 積極
冨岡さんは
私が頭を抱えて恥ずかしがってる様子を見て
「何でこいつ、恥ずかしがってるんだ?」っていう目をしたけど、突っ込んで何かを聞いてくるようなことはなかった。
以前、隊士の1人が言っていたけど
冨岡さんは、あまり他人に興味がない…
…でも、そう結論づけるにはまだ早い気がした。
『あ〜…もう…、ぅ〜、うぅ……』
「どうした、頭でも痛いのか?」
『…それ、ふざけて言ってるんですか?
面白くないんですけど。』
「…??」
冨岡さんは、
私の言っている意味が分かってないようで
首を傾げていて、そんな彼の頭の吹き出しには
クエスチョンマークが飛んでいるように見えた。
私はただ、恥ずかしくて悶絶してただけなのに
頭が痛いのとか、普通心配してくる?
しないよね?
でも、冨岡さんは至って真面目な様子で
冗談で言っている訳ではなさそうだった。
『……。あははっ、』
真面目すぎる冨岡さんに
私は笑いが込み上げてきて、我慢出来ずに声を出して笑った。
「…何を笑っている。」
『冨岡さんが面白くてつい…。ふふっ』
…きっとこの人は
他人に興味がないわけじゃなくて
ただ単に人との接するのが苦手で、不器用なだけだ。
こんなに話が噛み合わない人は出会うのが初めだったけど、
この部屋に入って最初に感じた緊張感は
沢山笑わせてもらったおかげで、もう緊張の"き"の字すら残ってない。
『冨岡さん、実を言うと私、
大正時代の人間ではないんです。』
「…!?いきなりとんでもないことを言い出したな…」
『あ、ごめんなさい。驚きましたよね?
でも本当のことなので、ちゃんと話をさせて下さい。』
その後、私はしのぶちゃんに話した時と同じように
冨岡さんにも説明をした。
私が話をしている時は
ずっと黙って聞いててくれて…
自殺した事や家族のこと以外を話し終わる頃には
冨岡さんも、しのぶちゃんと同様
私の話を信じてくれたようだった。