第3章 積極
正直な気持ちを言うと
冨岡さんが鬼殺隊に勧誘してくれて、嬉しかった。
私を必要としてくれているのが伝わってきて
すぐにでも返事をしたくなった。
でも、私にはまだ、覚悟が足りていない。
怪我をして運ばれてくる隊士を見たら
すごく苦しそうで、傷の痛みだって辛そうだから。
毒を喰らった時なんか、
生死を彷徨って、なかなか目が覚めない人もいた…
自分がもし同じ立場になったら…って
想像するだけでめちゃくちゃ怖い。
ただ鬼殺隊に入ったから、という理由で
今までと同じように蝶屋敷の手伝いが出来なくなる訳じゃないのは知ってる。
鬼とは戦わず、戦闘の後の事後処理部隊…
隠、と呼ばれているグループに属している人だっている…
例え鬼を倒せなくても
みんな自分ができる事を日々一生懸命やっているんだ。
私はこの時代の人間じゃないし
まだたったの2ヶ月しかここでの時間を過ごしてないけど…
色んな人に出会って、関わりを持っていくうちに
私も…
みんなのように何か役に立ちたい…。
私の命を救ってくれた冨岡さんやしのぶちゃんの為にも、時代の違いなんか気にせず
後悔しないような生き方をしたい…!!
…私はサッと立ち上がって部屋を出てから
屋敷を出た冨岡さんの跡を追いかけた。
走って向かうとすぐに追いつき
冨岡さんは、ちょうど屋敷の門を出たところだった。
『冨岡さんっ…!』
「…?どうした?」
『あの…っ、私……!
鬼殺隊に入ること、前向きに考えますっ!!
だからもう少しだけ…時間を下さい!!』
息を切らしながら
自分の気持ちを大声で叫んだ私を見て
冨岡さんは優しく、そして穏やかに微笑み、そのまますぐにサッと姿を消した。
『冨岡さん……ありがとうございます…。』
…いつの日か、貴方には一番最初に
私が自分の命を諦めた理由を、お話しします。
だからそれまで…
絶対に死なないで下さい…。