第3章 積極
『よし、じゃあ次は反対の手をやるね?』
「…。さんは
どうしてそんなに頑張れるのですか…?」
『え…?』
反対の手を差し出すと
私は彼女に対して、無意識に質問をしていた。
さんがこの時代に来た頃、
怪我をして目覚めた時は、悲しそうに涙を流して、とても苦しそうだった。
でもあの日から、さんはその時のような辛い顔は全く見せず、ただ直向きに
この時代での生活に慣れようと頑張っていた。
時代の変化に戸惑っているはずなのに
私やアオイ達にも、全く弱さを見せなかった。
だから私は、さんがそんなに頑張れる理由が分からないの。
『ん〜…、そんなの、決まってるじゃん。』
「え…?」
『みんながいつも頑張ってるから…
私も頑張ろうって思えるんだよ。』
「!!!!」
『特に胡蝶さんは、柱だから仕事も多いでしょ?
でも絶対に手は抜かないし、いつも一生懸命だから…
頑張ってる胡蝶さんを見てると
私も頑張ろうって…頑張る気力が湧いてくるの!!』
「っ…」
"しのぶは、本当に頑張っている…
これからも頑張って?"
「っ、姉、さん……」
『え…?胡蝶さん…?』
何故だろう…
今、さんを通して
カナエ姉さんの面影が見えた…。
鬼に殺されて亡くなった姉も
さんと同じように、いつも稽古や任務を頑張っている私を見てくれていたからかな…
……あぁ、そうか…
さんと一緒にいると安心したり
癒やされて落ち着くのは…
カナエ姉さんと似ている所があるからなのかもしれない。
『胡蝶さん…?おーい、大丈夫…?』
「……しのぶ。」
『ん…?』
「これからは胡蝶さんではなく、
しのぶって呼んで下さい。」
『え……えぇぇぇ!?!?
だめだよそんなの!!
柱の人を名前で呼ぶなんて…抵抗あるって!!』
「私がいいと言っているからいいんですよ。
様、も付ける必要はありませんからね?
これは柱としての命令です。」
『そんな命令ありなの!?
なんかずるい!!』
ずっと慌てているさんでしたが
しばらくすると漸く諦めてくれて
名前で呼ぶことを決意してくれました。