第3章 積極
『あ、そうだ…
胡蝶さん、今少し時間あるかな?』
「今ですか?特に急ぎの用はないので
大丈夫ですけど…」
『良かった!!じゃあこっち来て!』
私の手を取って、嬉しそうに歩き出したさん。
何処に行くのか不思議に思っていると
到着したのは、さんの自室。
部屋の中に入り、座布団に座るよう促されて
大人しく腰を下ろすと、さんは私の向かいに座っていた。
『胡蝶さん、手を出して?』
「手…?こう、ですか?」
手のひらを上に向けた状態で
片方の手を差し出すと、さんは両手で
私の手を優しく握った。
…そしてそのまま
私の手を優しく揉みほぐし、どうやら手の揉み療治をしてくれているようだった。
『これ、私がいた時代では
ハンドマッサージっていって、病院に勤めていた時
時々患者さんにやってたの。』
「そうなんですか…。
でもどうしてそれを私に?」
『鬼殺隊の隊士さんと接してるとね、
みんな刀を振るってるからか
刀胼胝(かたなだこ)がすごく出来てるの。
皮膚が硬くなってて、かっこいい手だけど
マッサージしてあげたいなって、ずっと思ってたんだ〜』
そう言いながら手を揉んでくれているさんの手つきは、とても優しくて…
少しずつ手の疲労が薄れていくような感じがした。
「凄く気持ちの良いマッサージですね。
手の筋肉が刺激されて、血行促進の効果を感じます。」
『ほんと?良かった〜!
胡蝶さん、いつも任務とか隊士の治療で忙しいから、少しでも癒してあげたいなって、ずっと思ってたんだよね〜。』
…確かに忙しいのは事実ですけど
さんはいつも、私のことを労ってくれているのに。
任務で日が昇る前の早朝、蝶屋敷を出ていく時、
さんはいつも私を見送ってくれて…
帰りが遅い時も、必ず起きて待っててくれている…
それがどれだけ、私の気力になっているか…
さんの存在に
私の心がどれだけ癒やされているか…