第17章 進物
『今日はいつも仕事でお世話になってる人を連れてきました。お店の中の物、見させて貰ってもいいですか?』
「あぁ、構わないよ。」
『ありがとうございますっ!
伊黒さん、あっちの方にある物見に行きましょう?』
「ん。邪魔をする。」
おばさんにペコっと頭を下げる伊黒さん。
柱の人って見かけによらず
意外と礼儀正しい人が多いんだよね…。
そして、店の奥の方へと移動した私達は
綺麗に並べられた売り物を眺めた。
『お相手の方、
髪を結ってるって言ってましたよね?
だから髪を結ぶ時に使う……、あ!
こういう紐とかどうですか?』
「うむ…、いいな。」
『あとは…、こっちの櫛や簪も可愛いですけど…』
「…。それらを贈るのは婚姻を申し込む時だけだ。」
『え?あ、そう…なんです、ね…。』
知らなかった…。
この大正時代では
指輪を渡してプロポーズするんじゃないんだ…。
…。ってことは、私もいつか冨岡さんから
こういう綺麗な簪を……送られたりする…のかな…。
……やばい、想像したら顔がにやける。
「…おい、。」
『!?!?は、はいっ!』
「くだらぬ妄想をしているのが丸分かりだ。」
『うっ…、す、すみません…。』
冨岡さんの事を考えていたのを
伊黒さんに簡単に見抜かれた私は、気持ちを切り替えようと頭を振った。
今は伊黒さんの贈り物選びに集中しないと…!
『あの、伊黒さんは
その方と結婚したいとか…、思ってます…?』
「…。今は鬼殺が最優先。
己が幸せになる事など考えていない。」
『そう…ですよね…。』
「…だが、お前と冨岡を見ていたら
少し羨ましくも思った。」
『え…?』
「お前達は、互いを尊重し想い合ってる…。
人は、大事な人ができると
守りたいという気持ちが芽生え
格段に強くなるが弱点にもなる…、
この前、蝶屋敷での冨岡を見たらそれを実感したが
奴がを守ろうとする姿は…、男として立派だった。」
…てっきり伊黒さんは冨岡さんのことを嫌ってると思ってたけど、あの時の話し合いの一件で
冨岡さんを見直してくれた…ってことなのかな?