第17章 進物
『お、お待たせしました…。』
伊「…行くぞ。」
チラリ、と私を見た伊黒さんは歩き出し
遅れないように私も後をついて行った。
どこに向かってるのか何も教えてくれず
ただテクテクと歩き続ける伊黒さん…。
一度稽古をつけてもらったけど
冨岡さんと同じように、自分から喋るタイプではない人だった…。
『…あのー、伊黒さん?
行き先を聞いてもいいですか…?』
伊「…到着したら言う。」
『えぇ…』
じゃあ私は目的地に着くまで
ずーっとモヤモヤした気持ちでいなきゃいけないのか…。
方向的に伊黒さんの屋敷に向かってる訳じゃなさそうで、一体何処に向かってるのか全く分からないまま
私はただ黙って歩き続けるしかなかった。
そして、約30分後ー…
伊「…。着いたぞ。」
『あれ…?ここは…』
到着したのは、以前蜜璃ちゃんと着物を買ってもらい、冨岡さんと食事をした商店街…。
でも、どうして伊黒さんが
私をここに来てくれたのが分からなくて…
その理由は、商店街の門を潜り抜けたところで
伊黒さんがやっと口を開いてくれた。
「、冨岡とはその後どうなんだ?」
『…。はい…?』
「相手があの冨岡なだけに、お前も苦労しているだろう。」
『い、いえ…!そんな事はないです!
割と…その…、関係は順調だと…思ってます…。』
「…では、贈り物をした事、された事はあるか?」
『??贈り物…?』
伊黒さんにそう尋ねられた私は
贈り物イコール、プレゼントだと頭の中ですぐに変換できた。
そういえば私…、冨岡さん以前に
誰かにプレゼントなんて送った事がない…。
そもそもプレゼントを贈りたい、とか発想すらしたことない…。
世の中の男女は
誕生日とか、クリスマスとかにプレゼントを贈りあってるはずだけど…、
私は冨岡さんと会って
一緒に時間を過ごせるだけで満足してたから
プレゼントを贈りたい、とかいう概念は全くなかったな…。