第1章 現代
『私、高校生の時までずっと
部活で剣道をやってたんです。
だから割と体力あるんで。』
とある事情で
学生の頃から家にはあまり帰りたくなくて…
でも、外で時間を潰すにはお金がかかるし
部活が終わった後も、私は1人で道場に残り
剣道の腕を磨いていた。
その甲斐あって、高校の時には
そこそこの成績を残す事ができ
同年代の女性より体力はある方だと思う。
『はい、じゃあ交換終わったので
また終わったら連絡下さい。』
「ありがとう。いや〜、うちの娘も
さんくらい愛想があればよかったんだけどねぇ。」
『え〜?』
「まぁ、見た目はうちの娘の方が華やかだが。」
…悪かったですね、地味で。
確かに私は、一度も髪を染めた事ない黒髪だし
仕事中は眼鏡をかけてる、伊達だけど。
眼鏡をかけている理由は単純明快…
賢く見えるだろうから。
それに…
眼鏡を掛けていれば地味で目立たないし
誰も私のことを気に止めないはず。
仕事をしている時以外の私自身のことは…
誰にも詮索されたくないんだ。
「眼鏡をかけるにしても
もうちょい可愛いデザインがあるはずだろうに…」
『失礼な!これ、おにゅーの眼鏡ですよ!?』
「じゃあセンスの問題だ…、壊滅的だねぇ」
『…処方してる薬、超絶苦くしてもらうよう
先生に言いましょうか?』
「あははっ、それは勘弁だ。」
『もう…、ふふっ』
…仕事は純粋に楽しい。
患者さんとの会話も仕事の一環だけど
激務の中で、私が唯一癒される時間だから。
辛いことの方が何倍も多いけど
それでも頑張れるのは、患者さんと楽しい会話をしてるおかげ。
これからもずっと
こんな毎日が続いていく…
この時の私は、そう思っていた。