第15章 潔白
黙々と配膳の準備をしている私を
アオイちゃんは嬉しそうに顔を綻ばせて見ていた。
ア「さん…、強くなりましたね?」
『そんな事ないよ〜…、まだまだ未熟者だもん。』
ア「ふふっ、でもさんが立ち直ったのって…
先日水柱様が来てくれた時から、
ですよね〜?」
『へっ…!?い、いや…、それは…』
…まさにアオイちゃんの言う通り。
私は冨岡さんのお陰で立ち直ったと言っても過言じゃない。
励まされた日のことを思い出すと
頭に思い浮かぶのは、泣きながら助けを求めた私を優しく慰めてくれた冨岡さんの声や温もり…
それと……熱くて激しかった濃厚なキス…。
幸せなひと時だったけど
思い出すだけで恥ずかしい…。
それに…キスをする前には
不可抗力だったけど、冨岡さんに胸を触られて…
あの時の光景が頭によぎると
尋常じゃないくらい顔の熱が上がってしまった。
ア「さ〜ん?何を思い出してるんです?
お顔が真っ赤ですけど〜」
『!?!?な、なんでもない!!
それより準備出来たから、食事配膳してくるね!!』
ア「あははっ、お願いしま〜す。」
…逃げるように炊事室から出た私だけど
アオイちゃんには絶対、冨岡さんの事を考えてて赤面した事はバレてるよね。
アオイちゃんはしのぶちゃんみたいに私を揶揄ったりしないけど、今みたいに笑われるだけでも、恥ずかしくて反応に困る…。
熱った頬を片手で仰ぎながら
食事を乗せたカートを押し、隊士達が集まっている場所にやって来た。
『…ふーーーっ、…よしっ』
扉の前で一度大きな深呼吸をしてから
私は扉をあけて、カートごと部屋に入った。
『失礼しまーす、お食事を用意したので
皆さん召し上がって下さいね〜。』
「「「っ……」」」
…声を掛けたのに誰も返事をしない。
でもなんとなく心の声は聞こえてくる。