第14章 濡衣
服の上からとはいえ
さすがに胸を触られたのは
どうしようもなく恥ずかしくて…
背後にいる冨岡さんも
少し困っているような雰囲気が出ているようだった。
「…。
触ってしまったこと…怒っているか…?」
『怒っては…ない、です…。
ただ恥ずかしかっただけで…』
蜜璃ちゃんみたいに
私の胸は全然大きくないし…
自慢出来るほどの大きさじゃないから
恥ずかしいとしか思えなかったけど…
不思議なことに
嫌な気持ちにはならなかった…。
男の人に胸を触られるのは初めての体験なのに、怖いとも思わなかった。
この前の任務では
他の男の人に肩を抱かれただけで気持ち悪くなったのに、好きな人に触られるのは全然嫌な気持ちにならなかった。
「…、俺は男、だから…
いずれはお前に…ちゃんと触れたい…。」
『っ、え…』
それは……
私が思い浮かんだ意味で合ってるのかな…?
答えを確かめたくて振り向こうとしたら
冨岡さんに頭を掴まれて阻止されてしまった。
「…今は見るな。そのまま聞け。」
『は、はい…』
「…。先程のように無意識ではなく…
いつかお前と、身も心も一つになりたいと望んでいる…。この意味分かるか?」
『っ、分かり、ます…。』
男の人とそういう行為は未経験だけど
私はもう20歳の成人を迎えてるし…
看護学校に通っていたから
どのように赤ちゃんを授かるのかも…
知識としては知ってる。
冨岡さんだって
私とそんなに歳は変わらないし…
ましてや男の人だから
性欲があったって何もおかしくない…
年頃の男性なら当たり前のことだって理解してる。
『私…、初めてのことは全部
冨岡さんに捧げたいって思ってます…。
でも…あの…、心の準備が…』
「そんな事は分かっている。
俺もすぐに、とは望んでいない。
今はまだ…お前と会い、一緒に過ごせるだけで十分満たされている。」
良かった…。
私のいた時代では
女性の顔や体目的で付き合う男の人もいたから…
そういう目だけで見られていたら落ち込んでたけど、
冨岡さんは思っていた通り、とても紳士的な人だ。