第14章 濡衣
「には…、俺がいるだろう…」
『っ…!?』
「お前が行動を制限されているなら俺に頼ればいい…。こういう時にこそ、恋人としての役目を果たせる…。」
『で、も……』
…今回の事は私の問題であって
冨岡さんには何も関係ないのに。
私が不甲斐ないから嫌な噂話も流れて
冨岡さんの事を悪く言う人だって出て来ちゃったんだよ…?
それなのに…
そんな事を言われたら、本音をぶつけてしまいそうになる…。
『…迷惑、を……かける訳には…』
「お前を救えるのに、迷惑だとは思わない。」
『っ、冨岡さんは…柱ですよ…?
私のことに…構ってる時間なんて…』
「確かに仕事は大事だが
恋人であるお前のことも大事だ。
…放ってはおけない。」
『……っ、ずるい、です…よ…』
…この人の優しさは
出会った時から全く変わらない。
私は冨岡さんに優しくされると
いつも自分の本音を隠し切れなくて
その優しさに甘えたくなる…。
加えて、
背後から私の体を
ずっと抱きしめ続けてくれているから
心地の良い暖かさも伝わって来てる…
好きな人から優しくされ続けた私は
もう我慢の限界で……辛い思いが涙となって目から溢れ出した。
『ひっ…く…、うっ…ぁぁ…っ』
「…、
お前の本音を聞かせて欲しい…。」
私の本音…?
そんなの一つしか思い浮かんでないよ…。
『っ、冨岡、さん……ッ……
お願いです……っ、…わたし、を……
…たすけてください、っ……』
「承知した…。
お前を泣かせた奴を俺は許さない…
…あとは任せろ。」
『っ、ありがとう…ございます…っ…』
…優しいだけじゃなくて
とても頼りになる冨岡さんに、私はまた好きの気持ちが増大した。
本当はずっと
誰かに助けを求めたかった…、
鬼殺隊だって辞めたくないし
これからも誰かの役に立ちたい…、
そんな私の本音を
冨岡さんには最初から見抜かれていたような気がしてならなかった。