第14章 濡衣
「ここにいるのは分かってんだ!!
サッサと出て来い!!!」
『っ…』
…その男性の声に聞き覚えは全くないけど
このままずっと騒がれるのは他の人達にも迷惑がかかる。
私は自分の部屋から声が聞こえた玄関の方に向かい、途中でしのぶちゃんと合流した。
「やっと来たか…。
おい、って女はどっちだ!?」
『私、ですけど…。あの、何か御用でしょうか?』
「御用、だと…?
お前が儂の息子に傷を負わせたんだろう!!」
『傷、って…?』
見た目は小太りの中年男性で
私はこの人の言っている意味がわからなくて
しのぶちゃんと一緒に首を傾げていると
男性は苛立ったように再び大声を張り上げました。
「しらばっくれる気か!?
お前、儂の息子の手を叩いたんだろ!?
そのせいで息子は…手首を骨折したんだ!!」
手を叩いたって…
じゃあこの人って
西口さんの友人のお父さんってこと…?
中年男性の正体は分かったけど
私には彼の言い分がまだ理解できなかった。
し「さん、今の話…
本当なんですか?」
『た、確かに手を叩いたのは本当だよ…。
でも、骨折するほど強くは叩いてない…』
「嘘をつくんじゃない!!
お前にやられたって息子が言っていたんだ!!」
『っ、そんな…』
私があの人の手を叩いたのは
無理矢理肩を抱かれて抵抗する為。
手首の骨が折れるほど強く叩いた覚えはないから…
この人の言う通り
本当に骨折しているんだとしたら、きっとあの時だ…
あの人が鬼に体を掴まれていた時
私が鬼の腕を切り落としたことで
地面に上手く着地できてなくて、手首を捻ってたんだ…
…考えられるのはあの瞬間しかない。
「全く…。大体女の癖に
調子に乗って鬼狩りなんかするから
息子のような犠牲者が出るんだ!」
し「…お言葉ですが、さんは誰かを傷付けるような人ではありません。」
「だったらどうして
うちの息子が怪我をしたというんだ!?」
し「息子さんの話だけを鵜呑みには出来ません。」
「!?息子が嘘をついてるとでも言うのか!?」