第14章 濡衣
「さんは…不思議な人ですね…」
『ん…?それは褒めてるんですか?』
「…。普通、自分の悪口を言うような人を
助けたいなんて思いませんからね…。」
『っ、なんですかそれ…!
馬鹿にしてるんですか!?
私が肩貸してあげてるの忘れてません?
お望みなら道端に置き去りにしたっていいんですよ?』
「それは困ります、マジで足痛いんで。」
『だったら変なこと言わないで下さい。』
「ははっ、……さん、ありがとうございます。」
『…どういたしまして。』
怪我の応急処置や肩を貸してあげた甲斐もあり
任務に行く前の時のような嫌悪感は
この人からはもう感じなかった。
…私のことが嫌いなままだったら
面と向かってお礼なんて言わないもんね。
嫌な噂話が流れていることに対しては
まだ不安は拭えないけど
隊士一人一人とちゃんと向き合って接すれば
噂もそのうち消えてくれるかもしれない…
そんな淡い期待を抱いたまま
しばらく歩き続けていると、漸く蝶屋敷に到着し
怪我を負った彼は、ちゃんと手当を受ける事ができた。
しのぶちゃんに話を聞いたところ
安静にしていればすぐに回復して
任務にも復帰出来るらしい。
し「さん、今回の任務ですが…
大丈夫でしたか…?」
『あー…うん、まぁ…。
噂のことで色々あったけど
ちゃんと鬼は全滅させて来たよ。』
し「そうですか…。
ではさんも休んで下さいね?」
『そうさせてもらおっかな…』
…今回はいろんな意味で疲れたから
自分の部屋で寛ぎたいと思ってた。
隊士の人の具合は
一度体を休めてから様子を見に行こう…
労ってくれたしのぶちゃんにお礼を伝えてから
私は自分の部屋に向かおうと歩き出した…
しかし、その時…
「おい!!!!って奴いるか!?!?」
『っ…、え……?』
…私の名前を呼ぶ男性の怒号が
蝶屋敷中に響き渡った。