第14章 濡衣
『んーっ…、朝日が眩しくて気持ちい〜っ』
無事に朝を迎える事ができて
背伸びをしながら体をほぐすと、とても清々しい気分になった。
『さて…と、傷の手当てもしないといけないので
このまま蝶屋敷に向かいましょうか。』
「…。俺達2人は、アイツのことが心配なので
この辺りを少し探してみます。」
…アイツ、とは
鬼との戦闘中に逃げ出した西口さんの友人のことだろう。
山を下る途中で見掛けると思ったのに
残念ながら遭遇する事はできなかった。
『すみませんがお願いできますか…?』
「はい、じゃあ俺達はここで。」
『お疲れ様でした。』
きっと私があの人を探して見つけても
すごく嫌われているから、顔を見た途端に嫌な顔されそうだし…。
ここは男性に任せた方がいいような気がした。
2人の隊士を見送った後
私は負傷した隊士を支えながら蝶屋敷までの道を歩き出した。
「っ、ぅ……」
『…傷、痛みますよね?
もう少しの辛抱ですから…、頑張って下さい。』
「……どうして、ですか?」
『え?』
「どうして俺の事なんか…
心配してくれるんですか…?
俺…、任務に向かう山道で
貴女の悪口を…アイツらと言いまくってたのに…。」
…突然そんなことを言い出した彼に戸惑った私だけど、思ってることを素直に話す事にした。
『関係ないからですよ。』
「…え?」
『私が悪口を言われてた事と
あなたが怪我をした事…、
直接的な関係は何もないじゃないですか。』
「っ、そんなこと…ないでしょう…」
『確かに悪口を言われてた時は
すごく辛かったし悲しかったです…。
でも私は、同じ鬼殺隊員であるあなたを
放っておくことなんて出来ません。』
もし怪我人を放置なんかしたら
私はきっと、一生後悔する。
悪口を言われたり、
嫌われて酷い扱いを受けたとしても
人を助けない理由になんかならない。
この時代に来る前の私は
いろんな事をすぐに諦めたり、後悔してばかりだったから…
もうあの頃の自分には戻りたくない…
今の私は
そんな強い思いをずっと抱えていて
人として恥じないよう、胸を張って生きていきたいんだ。