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《冨岡夢》恋い、慕う[鬼滅の刃]

第14章 濡衣





「…う、うわぁぁぁあッ!!!」

『……。えぇぇ…』




その隊士は鬼を見上げた瞬間
折れた刀を拾う事さえせずに、走って逃げ出してしまった。



…怖い思いをしたのは分かるんだけどさ、

さっきまで女がどうこう言ってたくせに
鬼を前に私を置き去りして
自分だけ先に逃げるって、それは男としてどうなのよ。



諦めるの早すぎだし
怪我をした隊士もいるのに、自分の事しか考えてないじゃん…。



呆れた私は、大きなため息が出てしまい
その間に斬り落とした鬼の手は新しく生えて復活していた。





『はぁー…、よし、やるか。』




気合いを入れ直した私は
鬼に刀を構えると、その鬼は大きな手で私を捕まえようとしてきた。



図体の割に動きは早かったけど
稽古をつけてもらった柱達の方が何倍も早いから、避けるのは簡単で…




「すぅー…、雪の呼吸、弍ノ型……玉雪斬伐。』

「!!ガッ……』




力技でもある弍ノ型を使うと
鬼の首をストンと斬り落とすことができて
鬼はあっという間に塵となって消えた。





『ふぅ…。』




…これで任務完了かな。




鬼がいる時のような嫌な気配はもう感じないし
あとは怪我人を連れて下山するだけ。


さっき逃げ出したあの人も無事だといいんだけど…。




刀を鞘に収めた私は
負傷した隊士と、彼の側に付いててくれた隊士達の元に向かった。





『鬼はもう倒しましたから
あとはゆっくり下山しましょう。
麓に到着する頃には夜が明けるはずです。』


「ぁ……、は、はい…」

『自力では歩けないでしょうから
肩、貸しますね?』





座り込んでいる隊士の腕に手を伸ばそうとすると
それを遮るように、別の隊士が間に割り込んできた。




「こいつは…俺達2人が交代で運びます。」

『え…?』

「…貴女は周囲に注意を払っていて下さい。」

『あ、はい…わかりました…
ありがとうございます…。』





何で手伝ってくれるのかはよく分からないけど
さっき逃げ出した人とは違って
残った2人は仲間を見捨てるような人じゃないみたい…。


その事に安心した私は
言われた通り、周囲に気を配りながら山道を下った。



この山に来た時みたいに悪口を言われることもなく、無事に山の麓に帰って来ることができた。



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