第14章 濡衣
「よ、よし…。
鬼は倒した事だし、さっさと下山するぞ。」
「あ、あぁ…。」「そ、そうだな…」
…どうやら喋る元気も残っているようだけど
この人達は大事なことを気にしていない。
『下山するのは、少し待って下さい。』
「は…?なんでだよ?」
『まずは、負傷した隊士の状態を見てからです。』
「あ……」
「そういえばアイツ…鬼にやられてたな…」
…自分の事しか考えていない隊士に呆れながら
私は木にもたれかかったまま蹲っている隊士の元に近付いた。
『大丈夫ですか?ちょっと体見ますね…』
「はぁ、はぁ……。うっ…」
『…大丈夫、命に別状はありません。
ただ肋骨と左足首が骨折してますね…。
自力で歩くのは無理だと思います。』
思っていたよりも怪我は酷くなくて一安心しながら、私は持っていたカバンから包帯を取り出して
止血している箇所を順番に巻いていった。
「…おい、早くしてくれよ。」
『…。もう少しで終わりますから…』
「ったく、その程度の怪我の治療なんか
後でやればいいだろ…。」
…確かにそうかもしれないけど
山の麓まで下りるには時間がかかるし
血が流れ続けていたら、怪我をしている本人は不安になるだろうし、貧血を起こして意識を失う可能性だってあるんだよ。
そう説明したところで
きっとこの人には何も伝わらないから
私は黙ったまま応急処置を施していった。
『…よし、これでとりあえずは大丈夫です。』
「あ…、ありがとう…ございます…」
『いえいえ、気にしないで下さい。』
「……。」
手当てが済んだ隊士は
私にお礼を伝えるとなぜかジッと見つめてきて…
不思議に思っていると
背後から嫌な舌打ちが聞こえて来た。
「チッ…、
終わったなら早く下山の準備しろよ。
女は本当にチンタラするのが好きだよな。」
『…、すみません…』
…そんなに早く下山したいなら
手当ての手伝いしてくれたっていいのに。
しかも舌打ちするとか…不死川さんじゃないんだから。
西口さんの友人に対して
心の中で文句を言いながら立ち上がると
私は再び嫌な気配を感じ取ってしまった。