第14章 濡衣
「水柱の女だからって調子乗るなよ?」
『…調子に乗っている訳ではありません。』
「生意気な言い方しやがって…。
ったく、西口もこんな女のどこがいいんだよ…」
…私から言わせれば
西口さんはどうしてこの人と友達なのかが不思議だよ。
性別の違いと、西口さんの告白を断ったからって
ここまで人を嫌いになれるなんて…。
「なぁ、どうやって水柱を口説いたんだよ?」
『だから…何も答える気はありません。』
「…あー、そうかそうか、
人に言えないような口説き方したんだろ?
アンタ顔は地味だけど、いい体してるからな〜」
『っ…』
…本当になんなの、この人、気持ち悪い。
同じ鬼殺隊として恥ずかしい。
大体、冨岡さんに対して口説いたつもりなんてないし、体を使って男の人を誘惑したことだって一度もないのに。
もう任務中は相手にするのをやめよう…、と思っていると、その隊士は私の肩に手を回してきた。
『ちょっと…!やめて下さい!!』
「はぁ?こういう風にされるの好きだろ?
嫌がるフリとかしなくていいって。」
『フリじゃないです!!っ、離して!!』
「っ、いってぇな…!!!!」
無理矢理肩を寄せようとする隊士の手に
私はバシッと力強く叩いた。
痛みに顔を歪めた隊士は逆上して
私の胸ぐらを掴んできて…
そんな様子を見ても
他の隊士達は地面に座ったまま傍観してるだけだった。
「女のくせに俺の手を叩いたな!?!?」
『っ、あなたが変な事をするからでしょ!?』
「どうやら少し…
痛い目見ないと分からないようだな!?」
鋭い睨みを効かせてくる隊士を睨み返していると、山に生えている木々の奥から
嫌な気配を感じ取った。
『……来る…』
「…は?」
『鬼が…近づいてきてる…、っ!?!?』
「!?うわッ……!!」
「お、鬼だ…!!!」
「なんで急に出てくんだよ!!」
思っていた通り
鬼は私達の近くに潜んでいたようで…
私と隊士の間に割り込むように
木の上から飛び降りてきて、私達は全員、鞘から刀を抜いた。