第13章 浮名
『あの、さ……
冨岡さんの耳にも…入ってると思う…?』
「さぁ、どうでしょう…。
あの人はあまり他の隊士と組まず
単独任務が多いですから、知らない可能性の方が高いと思います。」
良かった…。
私の事で冨岡さんには迷惑かけたくなかったから…
噂を知られない内に
早く事を解決させたいな…。
「噂についてはカナヲも一緒に調べてくれています。
だからさんは
普段通りに任務やここでの仕事に当たって下さい。」
『分かった…、ありがとう、しのぶちゃん。』
私達の話はそこで終了したけど
私の心にはずっと不安と恐怖が渦回っていた。
何だかこんな風に噂されるのは
元いた時代で、病院内でコソコソと話されている時と似ている。
またこんな思いをする羽目になるとは思わなくて、何度経験しても不快しか感じなかった。
そんな憂鬱な気持ちのまま
私は隊士達と接する事がないように
アオイちゃん達が仕事の分配をしてくれて、蝶屋敷の雑務を行っていた。
そんな時…
「カァーーー、、指令ダヨ。」
鎹鴉のカヨちゃんが私に指令を伝えに来て、鬼狩りをしに行く事になった。
今回の任務は私1人だけじゃなくて、他の隊士達と一緒の合同任務…。
こんな状況で行きたくはなかったけど
指令である以上従うしかない…。
私はすぐに出陣の準備をして蝶屋敷を出た。
カヨちゃんから集合場所を聞いてそこに向かうと、他の隊士達はすでに揃っているようで…
先日、一度だけ会った
西口さんと共にいた隊士が1人、その場にいた。
『…すみません、お待たせしました。』
「…なぁ、この人って確か……」
「あぁ…、あの噂の…」
「一緒の任務かよ…、最悪だな…」
『…っ』
集合時間には間に合ったのに
いきなり嫌悪感丸出しの嫌な視線を向けられた。
…私が同じ任務である事に、最悪だと呟いたその人が西口さんと仲が良かった人。
西口さんはこの場にはいないけど
きっと私が彼をフッたことに快く思われてないのだと、直ぐに察しがついた。