第13章 浮名
し「さん…、お話があります。」
『し、しのぶちゃん……。でも、わたし…薬を…』
し「それはアオイ達にやってもらいますから
直ぐに私の部屋へ来て下さい。」
『……はい。』
…いつに無く真剣な表情のしのぶちゃん。
普段のような笑顔は一切見られなくて
私は黙ってしのぶちゃんの後をついて行った。
彼女は部屋に着くまでずっと黙ったままで
私はしのぶちゃんが畳に座ってから正面に正座をした。
「…。その様子だと
今流れている噂の事、さんも知っているようですね。」
『っ、噂って何…?どういうこと…?』
しのぶちゃんは
今、鬼殺隊の中で私の噂話が流れていることを
包み隠さず話してくれた。
噂話の内容は
さっき病室の前で聞いたことと一致していて…
私は戸惑いを隠せなかった。
『どうして…そんな噂が…』
「私も他の隊士達が話しているのを聞いただけなので、噂の出所は今調査中です。
根も歯もない噂なので、気にしないで下さい。
…と言っても、さんには難しいですよね。
何か心当たりはありませんか?」
『ううん、何も…。
ひょっとしたら私がここでお世話をした人達に
何か不快な思いをさせちゃったのかな…。』
「それはあり得ませんよ。
ここに来た人達は、皆さんさんに
とても感謝していたじゃないですか。」
『そう…なんだけど…』
…考えても思い当たる節は何もなかった。
でも、あんな悪意が露わになった噂が流れている以上、私の知らないどこかで誰かの恨みを買ったのかもしれない。
そう考えると途端に怖くなって
体がブルブルと震え出した。
「…さん、落ち着いて。
調査の結果が出たらすぐに教えますから。
こんな事で弱気になったらだめですよ?」
『っ、うん…。
ごめんね…、しのぶちゃん忙しいのに
私の事で余計な仕事増やしちゃって…』
「私は大丈夫ですよ?
こんな酷い噂を流した人を早く見つけ出して、懲らしめてやらないと気が済まないとしか思ってませんから。」
…笑顔でそう言うしのぶちゃんは
久しぶりに見るブラックオーラが漂っていた。
笑顔なのが余計に怖い…。