第2章 大正
side 冨岡
…今日、俺は何体の鬼を滅殺するだろうか。
鬼殺隊、柱の仕事の一環である見回り警備の巡回中
俺はそんな事を考えていた。
ここ最近、
全ての鬼の首領…
鬼舞辻無惨の直接支配下にある十二鬼月と呼ばれる鬼が、中々姿を現さない。
十二鬼月は上弦6体、下弦6体に分かれており
その鬼達は、強い力を持っている。
下弦の鬼は何度か遭遇したが
俺以外の柱達でも倒す事など容易い。
しかし、十二鬼月は階級制度。
下弦の鬼を一体倒せば、また新たな鬼が下弦の鬼となる…
実力序列の組織だが
鬼達の間でも、自身の階級の上げたいが為に
下弦の席ではない鬼の中にも、強い力を持った鬼が存在している。
そんな鬼達を、一体でも多く倒すのが
俺達……鬼殺隊の使命だ。
担当している区域を順に、見回り警備をしていると
俺の鎹鴉が伝令を伝えに来たようだった。
「義勇、御館様カラノ伝令ダ…。
高尾山ヘ向カエ。山中ヲ巡回中ノ鬼殺隊員ガ
全員、鬼ニヤラレタトノ情報ガ入ッタ。直グニ向カエ。」
「…承知した。」
高尾山は、今俺がいる区域から距離が近い。
巡回中にも関わらず、そのような命が下ったのは
他の柱よりも、俺が1番早く駆けつけることができると、御館様がそうご判断されたからだろう。
高尾山へと視線を向けた俺は
直ぐに走って山へと向かった。
あまり時間が経つ事なく、麓に辿り着き
そのまま走って山中を駆け抜けた。
しばらく走り続けると、幾人もの鬼殺隊士が
地面に倒れ、血を流し、絶命しているのを発見した。
「…。」
…どうやら、生き残った隊士はいないようだ。
倒れている隊士達を眺めていると
そのうち一人の男隊士が身に付けている隊服が目に入った。
「階級…戊(つちのえ)、か。」
本来、階級は
藤花彫り(とうかぼり)という特殊な技術を使い
手のひらと、筋肉の膨張によって
己の手に階級の文字が示されるが…
この隊士は、階級が上がった事を誇らしく思い、隊服に"戊"の文字の刺繍を縫い付けたのだろう。