第13章 浮名

『あ、あの……、冨岡さん…、』




2人だけになったところで
冨岡さんの方を向いて声を掛けると、チラリと私に視線を向けたと思ったら、すぐにそっぽを向いていた。







「…悪かったな、愛想が悪い男で。」




…え、なんか拗ねてる？


でも他の人に愛想が悪いのは本当のことだし…。





『…。あははっ』


「…何がおかしい。」

『だって、冨岡さんが拗ねてるの
初めて見ましたよ？
なんか可愛いな〜って。』


「…。俺よりお前の方が可愛いだろう。」


『っ、サラッとそういう事言われると
恥ずかしくなるんですが…。』




…でも、嬉しいな。


冨岡さん、私のこと可愛いって思ってくれてるんだ…。



顔がニヤつくのを我慢出来ずにいると
冨岡さんは小さくため息を吐いた。





「お前は…、本当に俺が恋人でいいのか？」


『！？どうして…そんなこと言うんですか…？』


「俺は…さっきの奴らが言うように
愛想を振り撒けないし、人を気遣うことも苦手だ。
言葉足らずで相手をよく苛つかせたりもする…。
だからにはもっと
相応しい男がいるのではないかと…、
西口の告白を聞いて、そう思ったんだ…。」



『っ、何ですかそれ！！
相応しいとか、相応しくないとか
そんなの関係ないですよ！！
私は冨岡さん自身が好きだから
一緒にいたいと思ってるんです…！』


「……。…」



『他の人に告白されたからって
揺らいだりしません…。
私は……、冨岡さんしか眼中にないです…』





…西口さんは確かにいい人だけど
異性としてはみれなかった。

告白されたのは嬉しかったし
嫌いなところなんてない。


……だからといって、
好きでもない人の気持ちに応える気なんて全くなかった。


心から好きって思える人は
冨岡さんただ1人だけなんだもん…。





私がどれほど冨岡さんの事を想ってるか
まだ伝わってなかったような気がして
気分が凹み気味になっていると

冨岡さんは私の体を強く抱きしめてきた。