第13章 浮名
「…今、戻ったのか?」
『はいっ!つい先程!
お待たせしちゃってすみません…』
「気にするな。そんなに待ってない。」
いつもと同じ口調で話しているのは
やっぱり冨岡さんだと実感できて…
嬉しくなった私は
冨岡さんが座っている横に腰掛けた。
『実は私、煉獄さんの家に行ってたんです。』
「…そうか。」
『弟さんがいるんですけどね?
お兄さんが亡くなってからまだ日が浅いのに
頑張って立ち直ったみたいです。』
「それは良かったな。」
『はい!
それで冨岡さんは…?私に何か用でも…』
「用事、は……、特に何も…」
…ん?!じゃあ何しに来たの!?
用がないのに蝶屋敷に来た事が
しのぶちゃんに知られたら、また嫌味言われちゃうよ!?
「ただ……、お前の顔が見たくなったんだ…」
『へっ…?』
「屋敷の前を通りかかったのは偶然だが…
に会いたいという気持ちを抑えられなかった…、急に来て迷惑だったか…?」
『迷惑なわけ…ないですよ…』
…むしろ嬉しすぎて悶絶しそう。
会いたいと思ってたのは
私だけじゃないんだって…
冨岡さんも私に会いたいって思ってくれていたのが分かって、嬉しくて踊り出したい気分…。
『私も…冨岡さんに会いたかったです…』
「っ…、そうか…。ならば来て良かった…」
恋人同士になりたての私達には
嬉しい気持ちと、恥ずかしい気持ちもすごく強くて…
お互いに気恥ずかしく思ってるのが分かるけど
2人で一緒にいれる時間を過ごせることに、私は幸せを感じた。
そんな時…
ア「あの〜、さん、少しいいですか?」
『あ、アオイちゃん!どうしたの?』
ア「実は今、西口さんがお見えになりまして
さんに話があるそうなんです。」
『話…?なんだろ、急ぎの用件かな?』
ア「さぁ…。
今は玄関で待っていらっしゃいますが…
どうします?日を改めて貰いますか?」
…きっとアオイちゃんは
私が今冨岡さんと一緒にいるから
気を遣ってそう言ってくれてるんだろう。