第2章 大正
「もう限界がきてるようだなァ!?
やっぱり人間じゃあ、俺達には勝てねェんだよォ!!」
『ッ、カハ…ッ!!』
避けきれなかった妖怪の蹴りが
私のお腹に入ってしまい、私は体ごと後ろにすっ飛ばされ、木に背中を強打した。
『ッ…!!ゲホッ…』
口から血を吐いた私は
再びこちらに向かってくる妖怪に刀を向けようとしたけど…
『は…ぁ……。うッ…』
だめだ…、もう体に力が入らない…。
意識はなんとか保てているけど
背中もお腹も……、体中が痛すぎて、立ち上がることさえ出来ない。
諦めずに頑張って戦ったけど…
やっぱり私は、死ぬ運命だったのかな…。
持っていた刀を握っているのも限界で
私の手から刀が地面に落ちると
妖怪は私の目の前に立って見下ろしていた。
「まさかお前みたいな小娘に
こんなに手間かけされるとは思ってなかったなァ?」
『…っ、そう、です、か…』
「俺の体を真っ二つにしたのは
見事だったと褒めてやる。だから死ぬ前に
最後の言葉くらいは言わせてやるよォ。」
…最後、か。
どうせ死ぬのに、何か言ったところで
誰かの耳に入るなんて思えないんだけどなぁ。
でも、せっかく妖怪が時間をくれたんだから…
私は震える唇を動かして、口を開いた。
『ありが、とう…ございました…。
諦めない、ことの…大切さ、を……
思い出させて、くれて…。』
これまでずっと、我慢をしたり
諦めてばかりの人生だった。
でも最期に、自分で決めたことを全うできて…
もう何も悔いは残っていない。
「ヒャハハハハハッ、面白れェ女だ!!
鬼に礼を言う奴なんざ、初めて見たぜェ!!
じゃあまずは、腕をもぎ取って喰ってやるからなァ?」
…やだなぁ。
腕を千切られたらきっと痛いだろうなぁ…
でも既に体中が痛いから
今更痛みが増えたところで、そんなに変わらない、か…。
そう思えると、フッと笑いが込み上げてきて
口元を緩ませていると
妖怪の手が私に伸びてきた。