第10章 突風
急に泣き出した私を見て
しのぶちゃんは何も言わずに、ただ優しく抱きしめ返してくれた。
私の方が年上なのに
すごくみっともないと思われたかもしれないけど、そんな事を気にする余裕は私には無かった。
冨岡さんに告白されて嬉しかった…
あの人の恋人になりたかった…
好きな人と結ばれて、幸せになりたかった…
そんな思いが涙となって溢れた私は
そのまま1時間ほど、しのぶちゃんに抱き締められながら泣き続けた。
『うっ…ぅ……しのぶちゃんっ…
ごめん、ね…、』
「気になさらないで下さい、
さんに頼ってもらえて
私は嬉しいんです。少しは落ち着きましたか?」
しのぶちゃんの言葉にコクン、と頷いて返事をした私は、稽古の帰りだから、という理由でお風呂を勧められ、お言葉に甘えて入らせてもらう事にした。
『…ふぅーー。』
お湯はちょうどいい湯加減だったから
きっと私が泣いてるのをアオイちゃん達も見て、沸かしておいてくれたのかもしれない…
みんなの優しさに感謝しながら
お風呂を堪能させてもらった私は
髪を乾かし、着替え終えてからしのぶちゃんの部屋に向かった。
『しのぶちゃん…、お風呂ありがとう…』
「お礼なんていりませんよ。
でも……、何があったのかはお聞きしてもいいですか?」
『うん…、』
泣いてる私に1時間も付き合ってもらったから、流石に理由を説明せずにはいられなくて…
私は冨岡さんとの間にあった出来事を話した。
「…。そうですか…
まさか冨岡さんの方から気持ちを伝えて来るとは思いませんでした。」
『そんな言い方するってことは…
しのぶちゃん、冨岡さんの気持ちに気付いてたの…?』
「ふふっ、気付いていなかったのは
さんくらいだったと思いますよ?
甘露寺さんも気付いていたようですから。」
…え、そうなの!?
気付いてなかったのは私だけ、みたいな言い方されたけど、しのぶちゃんと蜜璃ちゃんがただ単に鋭いだけじゃなくて…?