第10章 突風
『不死川さんっ、稽古つけてもらってありがとうございました!!長々とお邪魔してすみません…!』
「お、おぉ…。」
「…、奴に挨拶など不要だ。」
『わっ…!
そ、そんなに引っ張らないで下さい…!』
私の話なんか聞いてくれない冨岡さんは
引っ張る力を緩めないまま歩いていて、ずっと怒っているようだった。
色々と聞きたいことがあるのに
冨岡さんの雰囲気がいつもと違って怖くて…
しばらく手首を握られたまま歩き続けていると、冨岡さんは急にピタッと道端で立ち止まり、私の方へと振り返った。
「…。」
『な、なにか言って下さいよ…』
「…。俺は頭に来ている。」
『…は?』
「お前が…不死川の家で一晩過ごしたことに…
腹立たしくて仕方がない。」
『そ、そんなこと言われても…』
…私だって
好きで一晩お世話になった訳じゃないのに。
朝まで爆睡してた事は
不死川さんに対してすごく申し訳なく思ったけど、冨岡さんに責められる理由がいまいちよく分からない。
「お前はもう少し警戒心を覚えろ…。」
『!?警戒心って何ですか!!
不死川さんは私の事を心配してくれただけですよ!?どうして冨岡さんがそんなに怒ってるんですか!?』
「…。先程伝えた事を…聞いていなかったのか?」
『っ、き、聞いてましたけど…』
冨岡さんが言いたいのは
私に惚れてるって言ってた事だよね…?
思い出すとめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた私は、目をキョロキョロとさせながら地面を見るように俯いた。
そんな私を見ていた冨岡さんは
私の手首を掴んでいた手を離し、今度はそのままギュッと手を握り締めてきた。
「俺は……、が好きだ。」
『……え?』
「お前の事が…どうしようもなく好きだ。
だから不死川の家になど泊まって欲しくなかった…。俺以外の男と…、一夜を共に過ごした事に…嫉妬した。」
…これは、夢??
冨岡さん……私の事を好きって言った…?
とても信じられなくて
ドキドキと高鳴る鼓動を感じながら、伏せていた顔を上げると、冨岡さんはいつもの綺麗な青い瞳で
私に熱い視線を送っていた。