第10章 突風
「…誰か来やがったな。」
『え…?どうして分かるんですか?』
「門が開く音がした。…お前見て来い。」
『!?何で私が!?』
「面倒くせェのは嫌いだっつっただろうが。」
…いやいやいや!!
ここ不死川さんの屋敷だよね!?
私の家じゃないんだけど!?
『自分で行けばいいじゃないですか…』
「口答えすんな!!サッサと見て来い!!」
『…。鬼畜柱…』
「あ゛!?!?何か言ったか!?」
『ひっ…!い、いえ!!何も!!』
…さっきの笑顔はどこへやら。
私の見間違いだったのかもしれないと思えるほど、不死川さんは顔に血管を浮き出せながら私を睨んできて…
あまりにも怖い顔で、逆らう事もできなかった私は、立ち上がって屋敷の玄関へ向かった。
『もー…、不死川さんのお客さんだったら
私が出ても意味ないのに…。』
ぶつぶつと文句の小言を言いながら玄関に到着すると、外からその扉を叩く音がした。
『…はーい、今出ますね〜』
昼間から不死川さんを訪ねてくる物好きなお客さんもいるんだなぁ…、と、そんな呑気な事を考えながら玄関の横引き扉を開けた。
『っ…え!?ど、どうして…』
ガラガラと音を立てて開く扉を開けると
そこには何故か冨岡さんが立っていて…
まさか物好きなお客さんが冨岡さんだとは思わず、私は驚きを隠せなかった。
「…、ここで何をしていた。」
『え…?な、何って稽古を…』
「一晩ここに滞在し、夜通し稽古をしていたのか?」
『!?何で一晩いた事知ってるんですか…!?』
カラスのカヨちゃんが蝶屋敷に知らせに行ったのは不死川さんに教えてもらったけど、何で冨岡さんも知ってるの…?
…いや、それよりも気になるのは
冨岡さんが怒ってる雰囲気を出してることだ。
「俺に知られると…困る事でもしていたのか?」
『い、いえ…。そういう訳じゃ…』
こんなに怒ってる冨岡さんは初見で
視線を合わすことさえ怖い…。
どうして怒っているのか全然分からなくて
ビクビクしながら怯えていると
部屋の中から玄関に向かってくる足音が聞こえた。