第10章 突風
『不死川さん!これからはもっと
今みたいに笑った方が良いですよ!?
そっちの方が近寄り難い雰囲気消えますから!』
「意味分かんねぇこと言ってんじゃねェよ!」
『あっ、また睨んだ、
それ本当に怖いですからやめましょうよ。』
「うるせェんだよテメェは!!!
俺は元々こういう顔なんだよ!!!」
『でもさっきは確かに笑ってて…』
「チッ…、テメェの見間違いだろ…」
『その舌打ちもやめましょうよ…。
私のいた時代だったら
パワハラ認定されて訴えられますよ?』
「別の時代の言葉を使うな馬鹿が!!
パワハラって何だよ!?
つーか俺の顔のことより
お前のそのダセェ眼鏡の方が問題だろ!!」
『なっ、ひどい…!!!
この眼鏡は私のお気に入りなんですよ!?
馬鹿にしないで下さい!!』
「ダセェ、馬鹿ダセェ、糞ダセェ。」
『そこまで言わなくても良いじゃないですか!!!』
不死川さんに眼鏡を馬鹿にされたのはムカついたけど、こんな風に言い合えるのは嫌じゃなかった。
柱だから失礼のないように接しなきゃ、とか
怒らせないようにしないと、とか考えてたけど、素で話してみると意外と普通の人だった。
無視されることもなく
子供のように言い返してくる不死川さんを見ていたら、上司と部下の分厚かった壁が無くなったように思えた。
「はァ…、ったく、
稽古よりテメェと話す方がよっぽど疲れる。」
『だから!!言い方ひどいですって!!』
「…けど、御館様がテメェを気に入ってる理由なら、何となく分かった。」
『え…?私、気に入られてるんですか?』
「自覚無ェのかよ…、致命的な頭だなァ」
『…お願いですから言い方にもっと気を配って頂けませんか?』
「フンッ、面倒くせェ事は嫌いなんだよ。」
…言い方に気を付けることの
何がそんなに面倒くさいんだろう。
御館様と話す時は
すごく丁寧な言葉使ってたくせに…。
不死川さんの容赦ない言い回しに呆れて
ため息を吐いていると
不死川さんは急に外の方へと視線を向けた。