第10章 突風
『不死川さん、あの…
ありがとうございます…。』
「…チッ、礼なんか言ってんじゃねェ。」
『そうはいきませんよ…。
だって朝まで……、っ、あーーーーー!!』
「っ、急にデケェ声出すな!!
うるせェんだよ!!」
『すみませんっ!!でも…っ、
私一晩ここにいたから
蝶屋敷のみんなに絶対心配かけてて…!!』
「そんなことかよ…。
夜のうちにテメェの鎹鴉が飛んで行った、
何も問題ねェよ、馬鹿が。」
『そう…ですか……、よかったぁ…』
無断で外泊なんてしたら
絶対しのぶちゃんに怒られるし説教される…
カヨちゃんのおかげで助かった……、ありがとう…。
「さァて、お前も起きた事だし
一晩泊めてやった借りを返してもらおうか…?」
『え゛……、わ、私は何をすれば…?』
「決まってんだろォが…、昨日の続きだ。」
『うっ…』
…だよね、それしかないよね。
私に出来ることといったら
不死川さんの的になる事しか出来ないもんね…。
「今日は昨日みたいに倒れるんじゃねェぞ?
サッサと中庭に来やがれ!」
『はい…。あ、でもその前に
洗面所をお借りしてもいいでしょうか…。
寝起きなので顔は洗いたくて…』
「チッ…、部屋を出て右、廊下の突き当たりだ。」
『ありがとうございます…』
…場所は教えてくれたけど、また舌打ち。
普通に言ってくれればいいのに
きっと不死川さんは舌打ちが癖になってるんだね…。
私のせいで迷惑をかけたのは事実だし
これ以上機嫌を損ねないように
私は部屋を出て急いで洗面所に向かい
顔を洗ってサッパリしたところで
不死川さんが待っている中庭に向かった。
『ふぅ…、お待たせしまし……、あれ…?』
縁側で履き物を履いていると
昨日置いたはずのおはぎが入った紙袋が無くなっている事に気付いた。
『不死川さん…、昨日持って来たおはぎが…』
「っ…。うるせェんだよ!!!早く来い!!」
…なんで怒ってるの。
おはぎのありかを聞いただけなのに。
でも…置いてた物が無くなったってことは…