第10章 突風
『んっ……、ん…?!』
目が覚めて意識が浮上した私は
勢いよく体を起こすと、柔らかい布団の感触を肌に感じた。
『え、あれっ…?私…なんで布団に……?』
確か不死川さんに地獄の稽古をつけてもらってて……その後意識がなくなって倒れたはず…。
見覚えのない部屋の布団の上で
自分の身に何が起こったのか分からずに
辺りをキョロキョロと見回すと、部屋の外の縁側に座っている不死川さんの背中が見えた。
「やっと起きやがったのかテメェは…。
どんだけ寝れば気が済むんだよ。」
『す、すみません…。
私そんなに寝ちゃってました…?』
「フンッ、もうとっくに朝日が登った。」
朝日……?
朝日って……、朝…!?!?
え!?私、一晩ここでずっと寝てたって事!?
寝てる間に夜は更けて、翌日の朝になっちゃったの!?
『ご、ごめんなさいっ…!!!!
大変なご迷惑をお掛けして……!!!
本当にごめんなさい!!!!』
「チッ…、テメェのせいで
担当地区の警備も他の奴に頼む羽目になったじゃねェか…。いつまでも呑気に寝やがって。」
『そ、それなら私を置いて
警備に行かれても良かったんですけど…?』
「馬鹿かテメェは…。
寝てる女1人屋敷に残して外に出れるわけねェだろうが…」
『え……』
…じゃあ不死川さんは私の為に
ずっと屋敷に残ってくれたの?
初めて見る不死川さんの優しさに戸惑いながら、私は彼の背中を見つめた。
ずっと私に背を向けたまま
縁側に座って刀の手入れをしている不死川さん…
この人、見た目も怖いし稽古も厳しかったけど
思ってたより悪い人じゃないんだ…。
きっと私を運んで布団に寝かせてくれたのも不死川さんで、私の事を嫌ってるかもって思ってたから
まさかここまで面倒を見てくれるなんて、意外過ぎて驚かされた。