第9章 修練
side 冨岡
『送って頂いて、ありがとうございました!』
「あぁ。」
『また時間が出来たら
あのお店に鮭大根食べに行きましょうね?
今度は私がご馳走します。』
蝶屋敷までを送り届け
屋敷の門の前で礼を伝えられ、鮭大根の話をされた時、俺は定食屋にいた時の事を思い返した。
…1人でも何度かあの店に足を運んでいるが
店のオヤジが、あんなにも嬉しそうに笑って話すのは見た事がなかった。
は俺なんかよりも
人との壁を取り除くのが上手い。
誰とでもすぐに仲良くなれる。
途中でいなくなった甘露寺も、と知り合ってから間もないはずだが、の事をとても気に入っているようだった。
今日食べた鮭大根も
いつもと変わらない味のはずだが
と一緒に食事をしたことで、より美味く感じられた…
彼女が美味そうに食している所を見ると
腹だけでなく、心も満たされていったんだ。
自分にはないの長所を見つけると
羨ましく思うこともあるが、
…どうしようもなく、惹かれてしまう。
それに、俺が隊律違反を犯したことで
処罰を受ける羽目になることも、ずっと気にかけてくれていたの優しさを嬉しく思った。
『??冨岡さん?』
何も言わないまま考え事をしている俺を
不安気に見つめてくるを見たら
俺は無意識に手を動かし、彼女の頬に手を添えていた。
『っ…、え……あ、あの…』
「…。」
手から伝わってくるの熱は
以前感じた時と同じくとても心地が良い…
…このまま、もう少しと時間を共に過ごしたい。
その願いを伝えようとしたところで
蝶屋敷の門の一部が開き、俺は慌てての頬からサッと手を離した。