第9章 修練
それになんだか…
冨岡さんの頬が赤くなってる気がする…。
咽せちゃった影響かもしれないけど
ひょっとして冨岡さんも私と同じで
夫婦と間違われたことに照れてる…?
この人が何を思っているのか知りたくて
無意識にジッと見つめていると、私の視線に気付いた冨岡さんと目が合ってしまった。
「…馬鹿、見るな。」
『す、すみません…』
冨岡さんと視線が合っただけで
私もだんだんと顔が熱くなってきて…
私達は2人で顔を赤くしながら俯いた。
「はははっ!
お客さん、2人とも顔が真っ赤だねぇ?
いやぁ!若いっつーのはいいもんだ!!」
『!?もうおじさん!?
揶揄うのはやめて下さい…!!』
「はっはっは〜」
…ははは、じゃないよ!!!
この空気どうしてくれるの…!?
その後の私達は
何も会話をしないまま鮭大根を完食し
食べ終わったところで店を出た。
お勘定をする時、私は自分の分は払うつもりだったのに、冨岡さんがさりげなく私の分のお金も出してくれていて…
お店の外で再度お金を渡そうとしたけど
冨岡さんは受け取ってくれなかったから
私は店の前で、ご馳走になったお礼を改めて伝えた。
『私の食事に付き合ってもらったのに…
本当にありがとうございます。』
「気にする必要はない。
お前の体が元気になるなら、食費ぐらい出す。」
『…ふふっ、冨岡さんって
すごく優しいんですね?』
「…。部下の体調を整えるのも
柱の仕事の一環だ。」
…それでも私は嬉しいよ。
好きな人から自分の事を気遣ってくれるだけで、これからも頑張ろうって思えるし、やる気が漲ってくるんだもん。
『お陰様でだいぶ元気になりました!
じゃあ私はそろそろ蝶屋敷に戻ります。』
「…屋敷まで送る。」
『え!?1人で帰れますって!!』
「また先程のように
得体の知れない男に絡まれない為だ…、送る。」
『えぇ……』
…もう着物じゃなくて
いつもの隊服に着直したから大丈夫だと思うんだけど。
そう言おうとしたら
冨岡さんはすでに歩き出していて
私は何も言えないまま、屋敷まで送ってもらうことになってしまった。