第9章 修練
『鮭大根かぁ…、食べた事ない料理です。』
「なら、食べてみるといい。」
『そうします!!
おじさん、私も同じのを下さい!」
「はいよ!鮭大根定食2つね!」
注文を済ませた私と冨岡さんは
空いていた一つのテーブル席に向かい合わせで座ると、店員さんが運んで来てくれたお茶を啜った。
…目の前にいる冨岡さんは
お茶を飲む姿さえカッコ良すぎて絵になる。
恋は盲目、というけど本当にその通りだ。
冨岡さんの動作一つ一つに目がいっちゃって
何をしてても、かっこいいとしか思えなくなってきてる…
一緒にいたらいた分だけ
冨岡さんへの気持ちが膨れ上がっていくような…
そんな初めての感覚に戸惑うけど
さっきのような居心地の悪さは、もう全く感じなかった。
お茶を何度か口に運んで喉を潤していると、冨岡さんは私の方を向いて口を開いた。
「…稽古の方はどうだ?
柱達相手に苦労しているだろう。」
『まぁ…、そうですね…。
正直言うとキツすぎて……思い出したくないです…。』
最初に稽古をつけてもらった煉獄さんは
すごくマシな方だった。
宇髄さん、伊黒さん、時透くんの稽古は
命懸けでやらないと大怪我をさせられるようなキツさで…
思い出しただけで、背筋がブルッと震えた。
「柱達は皆
お前には伸び代があると思ったのだろう。
俺もお前に期待している。」
『あ、ありがとうございます…!』
「根を上げずに、今後も鍛錬に励め。
ならいづれ、柱にもなれるだろう。」
『はい…!精進します!!』
…冨岡さんが応援してくれてるなら
どれだけでも頑張れる気がする!!
期待してくれてるのが嬉しくて
その期待に応えようと意気込んでいる私を
冨岡さんは穏やかに微笑んで見ていた。
「へいお待ち!!鮭大根定食ね!」
『ありがとうございます!
…うわぁ!凄く美味しそう…!!!』
程よく煮られていて柔らかそうな大根と
鮮やかなピンク色をした鮭が食欲をそそる。
『いただきますっ!』
美味しそうな香りも漂っていて
ワクワクしながら箸を手に取り、鮭大根を口に含むと、あまりの美味しさに私は目を見開いた。