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《冨岡夢》恋い、慕う[鬼滅の刃]

第2章 大正




「心配すんなってェ。
痛ェのな一瞬だけだからよォ…
死んだら楽になるぜ〜?ヒャハハハッ」



『ぁ……』





そうだよ…


私…死ぬつもりだったじゃん…



なのになんで、さっき避けたりしたの…?




このままこの妖怪に殺されれば
言われた通り楽になれる…



それなのに…なんで…








なんで殺されたくない、なんて…
思っちゃったんだろう…。





「お前は俺に喰われて今日が命日になるんだァ…
だからもう諦めろ、さっきみたいに避けんじゃねぇぞォ?」


『あ…きらめ、る…』





そういえば私って…

これまで何回、色んなことを諦めてきたのかな…?


一度でも…諦めなかったことって…あったっけ…。




そんなこと…

思い返してみても、何も思い浮かばない…。



私はずっと、色々なことを諦めて生きてきた。



早く諦めた方が
自分が苦しまなくて済んだんだもん…。



お父さんが死んで、お母さんが変わってしまった時、
働いて稼いだお金を奪われていた時…



勤めていた病院をクビになった時は、この先の未来を諦めた。





いつの間にか、私は諦めることに慣れていたから…


でもそれは、自分が苦しむのが嫌だっただけだ。



諦めるのが1番…ラクだったんだよ。





だから今も、諦めて妖怪に殺されれば
私はすぐにラクになれる…はず、なのに…






「おーい、死ぬ覚悟は決まったかよォ?」

『…。』





嫌だ…。



こんな妖怪に殺されるなんて…




そんなの……




死んでも嫌だ…!!!!






反抗したところで、この妖怪から逃げられるとは思えない…。

これから私がしようとしていることは
無駄になるかもしれない……でも…





『…ふーーっ』


「…あん?おい、てめぇ…どういうつもりだ?」



…どうせ死ぬのなら
最後くらい思いっきり足掻いてやろうじゃない。



今すぐに諦めて殺されるより…






一度くらい、最後まで諦めずに戦ってから死ぬ。





そう決意した私は、
そばに落ちていた刀を拾い、体の正面に構えた。




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