第9章 修練
化粧台の鏡を見ないように
俯きながら私は眼鏡をゆっくりと外し、台の上に置いた。
目を瞑って、ドキドキしながら2人の反応を待っていると、おばさんの声が聞こえて来た。
「嬢さん、目を開けて鏡を見てみな?」
『そ、それはちょっと…』
自分の素顔なんて、もう何年も見ていない。
顔を洗う時だって、眼鏡を外してからタオルで水気を拭いて、眼鏡を掛け直すまでずっと目を瞑ってる。
自分の変な素顔を見たくなくて
いつも鏡は見ないようにしてたから…。
蜜「ちゃん、目開けてみよう?」
『うー…』
蜜「頑張って!ちゃんはまず
自分の魅力に気づかないと!」
魅力って…
そんなの私の顔には無いはずなんだけどな…。
でも、励ましてくれてる蜜璃ちゃんに
ずっと拒否し続けることは出来なくて…
……私は覚悟を決めて、恐る恐る目を開けた。
『……。あ、れ…?』
私って……こんな顔してたっけ…?
思っていたより変な顔…じゃ、ない……。
もう何年も眼鏡をかけた自分しか見てなかったから、私は久しぶりに見る自分の素顔に驚きを隠せなかった。
蜜「ね?ちゃんは美人さんなの!
今は着物を着てるから、更に美人さん!!」
『っ……、あ、ありがと…』
…嬉しいけど恥ずかしい気持ちの方が強い。
自分で鏡を見て思ったけど……
恋をしてるのが丸分かりだったから…。
「ははっ、
ここまで自分に自信がない子は珍しいねぇ?
良かったらこのまま街中を散策しておいで?」
蜜「うん!勿論そのつもりだよ!
じゃあこれ!着物とかの代金です!!」
『え!?外行くの!?っていうかお金はいいよ!
自分で払えるから!!』
蜜「いいのいいのっ!
私からちゃんへの贈り物!!
それより外行くなら、草履と足袋も用意しないとね〜!!あ、おば様、これも貰っていきますね!?」
「はいはい、好きなの取っていきなさい。」
『蜜璃ちゃんっ、お願いだから話聞いて…』
蜜「よし、準備完了〜!!行くよちゃん!」
……全然聞く耳持ってくれない!!