第9章 修練
『…!?こ、これ……ほんとに私…?』
蜜「ねっ?ねっ?似合ってるでしょ〜?」
…自分で似合ってるとは恥ずかしくて言えなかったけど、似合っていないとは思えなかった。
紺碧色の着物は
私の肩の長さまである黒髪とよく合っていて…
まるで別人が鏡の前に立っているのかと思ったくらいだった。
こんなに綺麗な格好をした事がなかったから
驚き過ぎて絶句した私は、ぼーっと鏡の中の自分を見ることしかできなかった。
「嬢さん、こっちにおいで?
髪も着物に合わせて結ってあげるよ。」
『え…、でも…そこまでやってもらうのは…』
「いいからいらっしゃいな。
とことん美しく見立ててやるから安心しな?」
蜜「ちゃん、
遠慮なく結ってもらった方がいいよ?
おば様はそういうの得意なんだから!」
『うん…。それじゃあ、お願いします…』
2人に押されて
とても断れる雰囲気じゃなかったから
私は大人しく化粧台の前に座った。
おばさんが櫛で髪をとく手つきはすごく優しくて
その心地良さにほっこり、とした気持ちになった。
髪全体を櫛でとかされた後は
頭部の低い位置でお団子状に纏め上げられ
こめかみの髪は後毛として顔周りに残し
最後に、綺麗な簪を飾ってくれていた。
「…嬢さんや、その眼鏡は外しなさいな。」
『え?め、眼鏡はちょっと…』
「この着物に眼鏡は合わないよ。
嬢さん、あんたは本当に別嬪さんなんだから
顔を隠す必要はない。」
『でも…』
「せっかく綺麗な着物を着ているのに
その眼鏡のせいで美しさが際立たない、
それは、この着物にも失礼だと思わないかい?」
確かに着物はすごく綺麗だけど
眼鏡を外したら余計に失礼になる気がする…。
眼鏡を外す事に躊躇していると
背後にいた蜜璃ちゃんが私の両肩に手を置いた。
蜜「大丈夫だよちゃん、
自信を持って?」
『蜜璃ちゃん…』
蜜「女の子はね、恋をするとすごく可愛くなるの。
好きな人がいるちゃんは
本当にすっごく綺麗だし可愛い。
眼鏡外すの戸惑うなら、私からの命令って事にしちゃってもいいから、…ね?」
『…うん、分かった。』