第8章 上官
「…義勇。」
「…?はい。」
「君は少し残ってくれないか?
2人だけで話したいことがあるんだ。」
「…承知致しました。」
御館様から引き止められた俺は
持っていた刀を再び置き、畳に座り直した。
他の柱達は俺だけ残されることに
不思議に思っているようで視線を向けられたが
全員が外に出て行き、襖が閉まると
御館様が口を開いた。
「義勇…、何か悩んでいるようだね。」
「っ…」
「私の思い違いならいいんだが
君の雰囲気が普段と異なっている気がしたんだ。
何だか…戸惑っているようにも思える。」
…この御方には敵わない。
そう思うのと同時に
病で視覚を失っているにも関わらず
俺から醸し出されている雰囲気で御館様に悟られ
己の未熟さを痛感した。
「申し訳御座いません…。
柱でありながら、御館様にご心配をおかけして…
深く、お詫び申し上げます。」
「謝る必要はないよ。
ひょっとして……君が悩んでいるのは
のこと…じゃないのかい?」
「っ…」
…御館様には、全てお見通しなのか。
益々自分が不甲斐なく思えたが
悩みの種を的中された為
俺は嘘偽りなく、己が抱えている胸の内を全て話した。
「…。そうか、義勇は感じた事のない感情に
戸惑っているんだね。」
「はい…。これまで一度も感じた事のない、
不思議な気持ちです…。
気分が悪くなるような感覚ではありませんが
今後どのように彼女と接していけばいいのか…
分かりません…。」
と関わると
何故かいつも胸の鼓動が早くなり
泣き顔を見た時は、優しくしてやりたくなる…
笑った顔を見た時は、心が穏やかになった。
蝶屋敷の前で
転倒しそうになったの体を支えた時は…
彼女を離したくない…
ずっと触れていたいなどと思ってしまった。
西口という隊士がに向ける目を見た時には苛立ちを感じ、
先程不死川がを見ていた時の目を見たら…
とてつもなく、嫌な予感を感じたんだ。