第8章 上官
そしてその拍子に
彼の拳が私の顔に当たりそうになったけど
ギリギリ交わす事ができた。
…そしてその瞬間、
部屋の中の空気が変わったような気がした。
「まさか…
別の時代から来たっていう女隊士はテメェか?」
『まぁ…、そうですけど…』
「テメェみてぇな怪しい奴に
手当てなんかされる覚えはねェ。
…分かったらとっとと失せろ!」
…あぁ、そうか。
この人が私のことを信用していない人なんだ。
それに、この部屋の中の空気で分かる…
きっとこの人以外にも
私を不審に思っている柱はいるはずだ。
…でも、今はそんな事、私にはどうでもいい。
『…無理です。』
「あ…?」
『だから、血を流した怪我人が目の前にいるのに
失せろ、とか言われても無理です。
放っておけないんです、気になって仕方ないんです。』
「テメェ…、ふざけてんのか?
下弦の鬼を倒したらしいが
それくらいで調子乗ってんじゃねェぞ!?」
『…??私が鬼を倒したことと、
貴方の怪我の手当てをすることって
今は別に関係なくないですか?』
「っ…」
し「ふふふっ」
…え、私何か変なこと言ったかな。
しのぶちゃんはなんか笑ってるし
ピンクの髪をした女の人も口元を押さえて笑ってるし…
冨岡さんも私を見て、少し驚いた表情をしていた。
「…とにかく
こんな傷大したことねェんだよ!!
テメェの手当てなんざ必要ねェ!!」
『でも…、まだ出血してるじゃないですか…』
「こんなモン放っておきゃ止まる、
そもそも俺が怪我していようが血を流していようが、テメェには関係ねェだろうが!!」
…確かに、この人が怪我をしていても
私には何の害もないし、関係ないとは思う。
それでも私には、譲れない思いがあるんだよ…。
それに、不死川さんのその発言には無性に腹が立った。