第8章 上官
キ「さ〜ん、
玄関に西口さんがお見えですが…」
『え、また?2日前に来たばかりなのに…』
ア「はぁ…、またあの人ですか…。
さん、迷惑なら私が追い返しましょうか?」
『いやいや、迷惑じゃないんだけどね?
ただいつもお菓子の手土産持ってきてくれるから
なんか申し訳なくて…』
西口さんは、私が下弦の鬼を倒したあの日から
怪我が完治した後も、時々蝶屋敷に足を運んで
私が好きな甘いお菓子を差し入れに来てくれる。
治療を拒否していた頃とは別人のようで
彼の命を救った事を凄く感謝されていて…
その気持ちは私にも分かるから
今日みたいに、手土産を持って
わざわざ会いに来てくれる西口さんを
私は粗相に扱う事なんてできないんだ。
『じゃあちょっと応対してくるね〜。
アオイちゃん、残りの洗濯物お願いしていい?』
ア「それは…別に構いませんが…」
『ありがと〜!!』
アオイちゃんと、私を呼びに来てくれたキヨちゃんにお礼を言ってから、私は玄関にいる西口さんの元に向かった。
ア「全く…。
さんって本当に鈍いんだから…」
キ「あはは…、
すごく分かりやすいはずなんですけどね〜…」
キヨちゃんとアオイちゃんの会話は
私の耳には届かなくて…
急いで玄関まで行くと
いつもと同じように、紙袋を持った西口さんが立っていた。
西「こ、こんにちは、さん!」
『こんにちは〜。今日はどうされたんですか?』
西「えっと…、その…、任務の帰りに、ですね…、人気の和菓子屋を見つけたので…
どら焼きなんですけど…。良かったらどうぞ…!」
『え、でも…先日もお菓子を頂いたのに…
いいんですか…?』
西「勿論です!!
さんは命の恩人なので…
遠慮なく召し上がって下さい!!」
『そうですか…?
じゃあせっかくなので頂きます。
ふふっ、すごく美味しそ〜!』
紙袋に入ったどら焼きを見て顔を綻ばせていると、今日の西口さんは何だかソワソワしている様子な事に気付いた。