第7章 当主
『あ、あの…、冨岡さん…?
もう大丈夫ですから…。』
「…。」
『あの……?き、聞いてます…?』
冨岡さんは私の体に触れたままの手を
何故かなかなか離してくれなくて…
何も言葉を発しないまま
ただただ私を見つめていた。
…そんな綺麗な青い瞳で見つめられると
体が金縛りにあったように動かなくなる。
すごく恥ずかしくてたまらないけど
冨岡さんの手から伝わる熱はあったかくて…
離して欲しいけど、離して欲しくないような…
どうしてそんな風に自分が思うのか分からず戸惑っていると、少し離れた場所から私の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
西「さーん!!
戻って来られたんですね!!」
「…。」『!!』
名前を呼ばれた事で
冨岡さんからパッと離れて、慌てて距離を取ると
その人は私達の元に駆け付けてきた。
西「良かった…、今日蝶屋敷に戻られると聞いて
ずっと待っていたんです。」
『えっと…、西口さん、でしたよね?』
西「そうです!
さんに助けて貰ったお礼を言いたくて…
本当にありがとうございました!」
『そんな…お礼なんていいですって!
それより体は大丈夫ですか?』
「肋骨が折れていて、まだ少し痛みますけど
これくらい平気です!直ぐに治りますから。」
『そうですか…、それなら良かった。』
西口さんの様子はとても元気そうで
そんな彼の姿にホッと安心しながら話していると、西口さんは私の背後にいる冨岡さんに目を向けた。
西「水柱も……ご一緒だったんですね。」
「…。」
『…?』
…え、何この嫌な空気。
冨岡さんと西口さんって面識あったの…?
2人はお互いをジーッと睨むように見ていて
どうしてこんなに仲が悪そうなのか分からず、
私が2人のそばでソワソワしていると
西口さんは冨岡さんから視線を逸らし、私に声をかけてきた。