第7章 当主
下弦の鬼との戦いの場面が
頭の中に鮮明に蘇って来て……
ギリギリの命の取り合いというものが
あんなに過酷だとは思わなかった…。
…雪の型を取得していなかったら
確実に殺されていたはずだ。
『ぁ……』
…どうしよう、戦いを思い出すだけで体が震える。
御館様は視覚を失っているから
私が震えていても気付かないと思うけど…
奥さんのあまねさんには見られちゃってる。
こんな情けない自分を知られちゃったら
この先鬼殺隊の隊士として本当にやっていけるのかって…
呆れられるかもしれない…。
…でも、
あまねさんが御館様に私のことを話す様子はなくて……
私は何とか体の震えを無理矢理止めようと試みてると、御館様の手が私の顔に伸びて来て、額の上に置かれていた。
「嫌な出来事を思い出させたようだね…
ごめんね、。」
『っ、…』
「鬼と戦って、怖くなるのは不思議なことじゃない。
誰もが最初はそうなんだ…
恥じる事はないんだよ。」
『うっ…ぅ〜ッ…』
何でこの人は目が見えないはずなのに
私の考えてる事が分かっちゃったのかな…。
鬼を倒したことで、本当なら自分を誇らしく思いたい…
でも、一歩間違えたら死んでいてもおかしくなかった…
鬼と戦っている時も、その時の戦いを思い出した今も…
私はずっと……
『こ、こわか…った……っ
鬼の顔、も……出してくる…技、も……
殺される、って……思っ、て…』
「うん…」
『本当にっ……ひっく…ッ…
めっちゃくちゃ……、こ、わかっ…たぁ…。
怖かったよぉ……!』
気持ちを見透かされた以上
もう何も隠す必要がないと安心した私は
ボロボロと涙を溢して泣き喚いた。
御館様もあまねさんも
泣いている私に声を掛けることもなく
ずっと優しい眼差しで見つめてくれていた。
額の上に乗っている御館様の手は
すごく暖かくて優しい…
まるで、お父さんに撫でられているような、とても心地よくて、落ち着く手つきだった。
そして、そのまましばらく泣き続けた私は
いつの間にかまた眠っていて……
次に目を覚ましたのは、翌日の朝だった。